【8月6日】ライオンは嘆く
- 公開日
- 2025/08/06
- 更新日
- 2025/08/06
校長のひとりごと
広島に原爆が投下されて今日でちょうど80年となります。広島県の公式ホームページには次のようなことが書かれています。
今年は被爆、そして終戦から80年を迎える節目の年です。広島は人類史上初めて原子爆弾による壊滅的な被害を受け、約14万人もの尊い命がその年のうちに犠牲となりました。地球上には未だに1万2千発を超える核兵器が存在します。核兵器のない平和な世界を実現するために、現代に生きる私たちには何ができるでしょうか。被爆・終戦80年を迎える2025年は、広島では平和について考えるさまざまな行事が行われます。この機会に、平和について、今一度想いを馳せてみませんか。
広島では、若者達が集い、未来に平和をつなぐプロジェクトとして、「被爆80年人材育成特別プログラム」「国際平和のためのユース対話イベント」「#未来へのおりづるキャンペーン」など、様々な取組が行われます。
その一方で、世界中では今もなお、戦争や紛争が絶えず、多くの命が奪われています。パレスチナ自治区ガザでは死者は6万人に達し、150人を超える餓死。そのうちの6割が子どもです。栄養失調で痩せ細り点滴を受ける子、背骨が浮き出て母に抱かれた幼子などの映像を報道などで見ると、本当に心が痛みます…。しかし、イスラエルのネタニヤフ政権は「その子が痩せているのは遺伝子の病気を患っているためで、飢餓など存在しない」と主張しています。いったいどうなっているのでしょうか。終わりの見えない戦争…。当たり前の日常が送れない日常。今日生きていくことすらままならない日常…。
8月5日付、西日本新聞のコラム『春秋』からです。
平和に向けた世界会議を開いているというのに、人間たちは一向にまとまれない。ライオンは嘆く。「やれやれ、人間たちったら!ぶっこわすことしかできないんだ!」。ドイツの作家エーリヒ・ケストナーによる絵本「動物会議」は、第2次世界大戦が終わった4年後に出版された。地球上の動物が集まり、人間の子どもたちを救うため強硬手段に出る。象も怒りをぶちまける。やれ紛争だ、戦争だ、陰謀だ、金もうけだと言っては、子どもの未来を危険にさらし、ぶち壊している…。あまりにも今の世界と重なる。
「戦後80年に読みたい児童書」という企画が7月に始まった。岩波書店が交流サイト(SNS)で週2回、紹介している。今も戦渦に書き込まれる人は後を絶たない。「戦争の正体とは何か、物語を通して考えてみませんか」と呼びかけている。紹介された本を読んでみた。動物会議のほか「おとうさんとぼく」「13枚のピンぼけ写真」「暴力は絶対だめ!」など。中でも印象深かったのは「戦争は、」という一冊だ。
ポルトガルのレトリア父子がそれぞれに文章と絵を手がけた。クモのような不穏な生き物が増殖し、人の心を侵食していく。「戦争は、憎しみ、野心、恨みを糧とする」「戦争は、何も知らない人たちの柔らかな夢に入り込む」。戦争は、で始まる文章が連なる。
戦争の正体とは。人間たちは80年経っても同じ問いを続けている。
広島市内では8月3日から本日まで、「被爆80周年原水爆禁止世界大会・広島大会」が、フランスや英国、韓国など15ヶ国の政府や平和団体、被爆者、核実験被害者の代表者が集まり、核兵器のない世界の実現へむけての協議が行われています。また、「核兵器廃絶に向けた国際会議」「国連軍縮会議」「ノーベル平和賞フォーラム」など、平和に向けた様々な国際会議が今までも行われてきました。しかしながら、コラムにあるように世界はなかなかまとまることができない現状があります。そして、今日も世界のどこかで、かけがえのない命が無差別に奪われていく…。こんな理不尽なことが世界中で起きている現実。
今こそ、私たち一人ひとりが、平和について、命について真剣に考えること。そして、たとえ小さくてもいいので、平和のためにできる努力を続けていくしかないのだと思います。
(ひとりごと 第1064号)