【11月5日】命は尊い
- 公開日
- 2025/11/05
- 更新日
- 2025/11/05
校長のひとりごと
今朝の西日本新聞のコラム『春秋』からです。
マラソンの季節がやってきた。9日の福岡マラソンをはじめ、冬にかけて各地で大会が続く。市民ランナーでにぎわう福岡市の大堀公園で8月30日早朝、1人の男性の命を4人の行動が救った。
コース脇の芝生に倒れ込んだランナーに、居合わせたランナーたちが迷わず駆け寄った。あえぐような呼吸を確認した鵜瀬準一さんは心臓マッサージを始め「AEDを持ってきてください!」と声を張り上げた。山本丈晴さんは119番し、状況を伝えて指示を受けた。中原弘さんはカフェに飛び込んでAEDを借りて現場へ。AEDの使用経験があるカフェ店員の神谷小夜佳さんも駆け付け、手順通りに電気ショックを行った。救急隊の到着には全国平均で10分、福岡市は8分12秒かかる。その間の処置が命を分ける。4人の連携プレーで60代男性は息を吹き返し、社会復帰を果たした。
この出来事を知り、筆者は先日、救命講習を受けた。「両手を重ねて体重をかけて強く、速く、絶え間なく圧迫して!」。訓練用人形の胸を押し続けるとすぐ息が上がる。誰かと交代しながら続けた方がいい。心臓マッサージは胸骨の左側ではなく中心を押すこと、AEDを探すよりマッサージを継続することが大切とも学んだ。福岡市消防局は4人に感謝状を贈った。命を救う一歩目は、倒れた人に駆け寄る勇気と、周囲に助けを求めて声を上げる行動。特別な知識や能力ではない。
私は職業柄、何度も救命講習を受け、人形を使っての心臓マッサージやAEDやエピペンの使い方などは行ってきました。そんな私が、生まれて初めて生身の人間に対して心臓マッサージをしたのは、7年前の11月2日の朝でした。いつも朝の早い父が、6時前なのに起きてきません。父の部屋に行って様子を見ると寝息が聞こえない。口に手を当てると息をしていない…。「えっ」…「お父さん!」と、体をゆすってもピクリとも動かない父。私はすぐに119番をしました。救急隊の方が、「ベッドの上なら、床におろしてください。そして私たちが到着するまで心臓マッサージをしてください。電話はそのままつないでてください」。ベッドから父をおろし、必死で心臓マッサージをしました。必死でした。私は、何度も何度も父に向かって叫びながら心臓マッサージを続け、救急車の到着を待ちました。どれぐらい時間が経ったかはわかりませんが、救急隊の方々が到着され父の部屋へ。父の部屋で蘇生のための措置をされ、救急車に乗せ、病院へ搬送されました。病院の廊下で、父の無事を祈り続けました。しかし、父の心臓が再び動き出すことはありませんでした。私は放心状態になっていました。しかし、警察の方からの事情聴取や自宅に戻っての現場検証、そして父の通夜や葬儀の連絡や準備で涙も出ないまま一日が過ぎていきました。通夜に弔問してくださった方々からたくさんのあたたかい言葉をやお気遣いをいたただいて、涙が溢れて止まらなくなりました。父が亡くなったことを実感したのでした。母が亡くなってからちょうど10年が経ったときのことでした。
命ははかない…しかし、命は尊い…
かけがえがない命を誰もが輝かせることができる世の中でありたい。毎日のように流れる事件や事故で亡くなる方々。また罪のない人々の命を奪っていく戦争や紛争。そんな無情な争いのなくなる日がくるように、誰もが自分の命も人の命も大切にする世の中でありたい。とっさの行動でかけがえのない命を救った4名の方々は、素晴らしいと思います。救われたご家族や知人の方々はどれだけ喜ばれたでしょうか。
命を大切にする教育、気配りや思いやりを大切にする教育、志としなやかな心をもって、地域・社会に貢献できる子どもたちを育成するべく、保護者や地域の方々と力を合わせ、頑張りたいと強く思います。
[ひとりごと 第1107号]