【12月23日】幸せ
- 公開日
- 2025/12/23
- 更新日
- 2025/12/23
校長のひとりごと
藤尾秀昭さん監修の『1日1話、読めば心が熱くなる365人の人間学の教科書』の中に載っている、[あなたと健康社]の主宰者であった東城百合子さん(1925-2020)の「何があってもいいのよ。育てばいいから」です。
かけがえのない人生の師・常岡一郎先生は生涯にたくさんの素晴らしい言葉を残されました。私が最も好きなものは、「何があってもいいんだよ。育てば」という言葉です。人生に降りかかる様々な不幸災難。それを上手にいただいて、自分を磨くために生かしなさいという、とても深い言葉です。お天道様からの大切な賜り物をいただくか、いただかないか。そこが運命の分かれ道になるのだと思います。
私どもの会員に遺伝性疾患をいただいた者がいます。若い頃に事実を知った時の衝撃は大きく、家中のものをひっくり返して、気も狂わんばかりに荒れた時期があったといいます。私と会ったばかりの頃も「とても人前で言えません。墓まで持っていきます」とふさぎ込んでばかりいました。
「でも、この世の問題はこの世で片付けなくてはいけない。人の顔色ばかり見たって、そんなのはつまらない人生よ。いっそ皆の前で打ち明けてみたらどう」
私の言葉に耳を傾ける余裕などありませんでしたが、ある月例会でのことです。突然姿を現した彼女に私は「皆の前で何かを話しなさい」と言いました。すると驚いたことに、これまでの辛い体験を洗いざらい語り始めたのです。大きな心の変化があったのでしょうか。私は涙が止まりませんでした。話を終えた彼女は、私に近寄ってきて一言「先生、とうとう言っちゃった」と言いました。しかし、驚いたのはそれだけではありませんでした。同じ疾患を誰にも打ち明けられずにいた一人が寄ってきました。他に数人、人に言えない苦しみを抱えている人が、彼女を取り囲み、泣きながら話しかけているのです。彼女が変わったのは、この日からでした。我が社の記念式典でも堂々と体験を発表し、そこでも何人もの仲間を得ました。彼女の友だちはいま日本中に広がっています。
こういう言い方ができるかもしれません。逆境は自分を育てるいただきものだと考えた時、彼女は運をつかむことができた、と。ただ、運とは決してつかもうとして、つかめるものではありません。追いかけてばかりいると、必ず詰まる日が来ます。大切なのはつかもうと思わず、空になって流すことです。そうすると様々なよい縁がやってきます。常岡先生の生き方はまさにそうでした。
生きていればいいことばかりではありません。イヤなこと、苦しいこと、つらいこと、様々な困難や失敗もたくさんあります。しかし、それでもなお前を向いて生きていかなければなりません。しかし一方で、そんな苦しいことや辛いこと、逆境を乗り越えた時にこそ、人として成長があり、当たり前の有り難さに気づき、日常の中の「幸せ」、そして人の有り難さを身に染みて感じるものだと思います。
きついときは、「なんで私だけ…」「なんで私ばっかり…」などと思ってしまいます。しかし、「私だけじゃない。もっと苦しんでいる人がいる。それでも前を向いて頑張っている」、「私はかけがえのない命をいただいた。そして、たくさん人のおかげで生かされている。だからこそ『今』を精一杯に生きたい」…。そんな気持ちになって乗り越えていくことが大切なのだと思います。
いろいろあるのが人生…。そして、私たちは「かけがえのない命」と「かけがえのない縁」の中で、「自分探し」の旅をしている。「私とは何ぞや?」、「生きるって何?」、「命って何?」という永遠のテーマのようなものを感じながら生きている。一生懸命に生きていると、人や社会の役に立つ幸せ、人を笑顔にしたり喜ばせたりする幸せを感じることができる。ある人が言っていました。
「人は皆、『幸せ』になるために生まれてきた」
(ひとりごと第1140号)