【6月22日】自他共栄
- 公開日
- 2021/06/22
- 更新日
- 2021/06/22
Kのつぶやき
6月6日〜13日までの1週間、ハンガリーのブダペストで柔道世界選手権が開催されました。12日の女子78キロ超級の決勝では、朝比奈沙羅選手と冨田若春選手の日本人対決となりました。この試合は本戦で勝敗がつかず、ゴールデンスコア方式の延長戦へとなりました。その途中左膝を負傷した冨田選手が3回の「指導」をとられ、朝比奈選手の優勝となりました。そのあとの朝比奈選手の行動が、世界からも称賛されることとなりました。
朝比奈選手は、審判が勝ち名乗りをあげたあと一礼し、すぐに冨田選手のもとへ駆け寄り、声をかけました。コロナ禍であること、日本人対決であったことで、畳のそばには誰もおらず、歩くのが困難と判断した朝比奈選手は、負傷した冨田選手をおんぶしました。そして、畳を降りるときには、おんぶしたままきちんと一礼したのです。その一連の行動に会場からは割れんばかりの拍手が送られました。私はその映像を観ながら胸がジーンとしました。
国際柔道連盟公式ツイッターには次のように載っています。
「日本のアサヒナ・サラが称賛に値するスポーツマンシップを見せた。そして世界タイトルを獲ったことに大きなリスペクトを示したい」
それに対するコメントには
「一流の振る舞い」「最後にお辞儀したシーンが好き」「伝統とリスペクト。これぞジュウドウ」「見習うべき模範だね」「泣いてなんかいないさ」「このスポーツが最高である理由だ」・・・などが寄せられていました。さらに、フランスのメディアでは、
「アサヒナが負傷した仲間を畳から運び下ろした、感動的なスポーツマンシップの場面だった」
講道館柔道の創始者である嘉納治五郎氏の教えに
『「心身の持つすべての力を最大限に生かして、社会のために善い方向に用いる」という「精力善用」の精神と、柔道の修行を通して体得した「相手に対し敬い、感謝することで、信頼し合い、助け合う心を育み、自分だけでなく他人と共に栄えある世の中にしようとする」という「自他共栄」の精神は根本原則であり、これが世界平和に繋がる』
とあります。柔道は、「精力善用」と「自他共栄」の2つの精神を大切にされています。
全日本柔道連盟の山下泰裕会長が朝比奈選手の今回の行動についてコメントを出しています。
『柔道は教育的な価値が非常に高い。いくら王者であっても相手へのリスペクトを失った態度は絶対に許されない。日本代表選手がああいった場で、自然に出たと思うが、勝った負けただけではない柔道の素晴らしさを伝えてくれた。朝比奈選手も医学の道との両立で十分な準備ができず、不本意な結果や試合に出られなかったりしていたが、その思いを今回の大会でぶつけてくれた。日本のトップ選手が示してくれたこの態度や姿勢は、これからも大事にしていきたい』
朝比奈選手は“闘う医学生”として、今春から大学の医学部に進学し、勉強と柔道を両立しながら努力を積み重ねている方です。昨日取り上げた井上尚哉選手もそうでしたが、相手へのリスペクトは決して忘れることなく、人間力が高い人はやはり大成するのだと思います。自分のことしか考えないのではなく、相手を敬い感謝する気持ちをもち、他と共に世の中に貢献しようとする心をもった人でありたいと今回のことから感じました。そして何より、同じ日本人として誇らしい気持ちになったのは私だけではないと思います。