【7月8日】正解のない質問
- 公開日
- 2021/07/08
- 更新日
- 2021/07/08
Kのつぶやき
昨日は、西日本豪雨から3年目を迎え、各地ではその追悼式が行われていました。また、先日土石流のあった熱海市では、警察や消防、自衛隊の方々1700名の体制で、土砂等の撤去とともに、安否確認作業が進められています。先ほどの情報では、亡くなられた方9名、安否不明の方は22名とのことです。土石流発生から6日目となり、厳しい状況が続いています。まだまだ大雨の予報等もあり、本当に心配です・・・これ以上の被害が出ないことを祈るばかりです。
さて、昨日のひとりごとにも載せた青木唯有さんの『親が偏差値思考をやめれば、不思議なほどわが子は伸びる』の内容についてふれます。この本の中には、大学の「総合型選抜」入試のことが書かれています。総合型選抜(旧:AO入試)とは、エントリーシートなどの受験生からの提出書類のほか、面接や論文、プレゼンテーションなどを課し、受験生の能力・適性や学習に対する意欲などを時間をかけて総合的に評価する入試方式です。従来の入試方式と比べると、「高い学習意欲」「学びへの明確な目的意識」が選抜基準として重んじられているため、選抜方法もその点が判断できるような内容となっています。出願時に受験生自身が作成して提出する書類が多いことも特徴です。2021年度入試から、学校推薦型選抜と同様に、各大学が実施する評価方法に、共通テストを含む教科・科目に係るテストや小論文、プレゼンテーションなど、学力を確認する評価方法を活用することが必須となりました。要するに、単にペーパーテストの点数がいいだけでは合格しないということです。これは、これからの社会に求められている人材を意識したものです。
実は、日本でいう「偏差値」は海外ではまったく一般的ではありません。海外ではペーパーテスト一辺倒の「認知スキル」のみで合否を決めるようなことはしません。例えば、ハーバード大学では、成績が優秀なことは当たり前で、その上で地域社会やコミュニティに対してこれまで何を還元してきたか、どんなふうにリーダーシップをとって、何をまとめあげてきたのかまで自らの活動歴を証明することが求められるということです。「勉強だけは頑張りました!」ではまったく話にならないということがいえます。
すなわち、問われているのは「偏差値」でも「認知スキル」でもなく、総合的な“人間力”。総合的な評価は、企業の採用活動においても同様であることもこの本には書かれています。就職試験の面接の際、「1本100円のボールペンを1万円で売るにはどうしたらいいか?」というようなことがしばしば聞かれるそうです。他にもこんな質問が紹介されていました。
◆あなたの個人的な「緊急事態宣言」とは何ですか?
◆あなたが過去に「絶対に流行しない」と思っていて現在大流行しているものは何ですか?
◆ほ乳類が100万年かかる進化をウイルスはわずか1年でやってのけるといいます。このメッセージからあなたは何を感じますか?
◆あなただけが1日28時間使えるとしたら特別な4時間を何に使いますか?
◆日本にもう1日祝日をつくるとしたら、あなたは何の日を制定しますか?
◆電車の中で高齢者に席を譲ったところ「いや、結構です」と断られました。どうしても席に座ってほしいときにかけるあなたの一言とは何ですか?・・・
どれも面白い質問ですよね。「正解」はありません。様々な答えがあるはずです。そこに、その人の“人間性”や“人となり”が出るのだと思います。性格や発想、これまでの生活経験から生まれた価値観が分かります。それが、昨日のタイトル「非認知スキル(能力)」につながっているのです。
日本の大学入試の流れも「総合評価化」「総合型選抜」になってきています。2020年度実績では、私立大学入学者全体の52.4%が「総合型選抜」もしくは「学校推薦型選抜」で入学しているそうです。国公立大学もだんだんとこの流れになっているとのこと。今、社会は、世界は単に「学力の高い人間」ではなく、「総合的な人間力が高い人間」を求めています。だからこそ、常に広い視野をもち、自ら課題を見つけ、その解決方法を考え、その解決にあたること、そして、たとえ失敗しても粘り強く努力し続ける経験をたくさん積むことが大切なのだと思います。学校でも家庭でも、子どもたちへの「自律貢献」を目指した働きかけや取組をしていくことで、「正解」のない質問にも「私はこう思う。なぜなら・・・」と、自分の意見をしっかりと述べることができる御陵中学校の子どもたちが育つのではないでしょうか。