新型コロナウイルスもまだまだ落ち着かない状況が続いています。学級閉鎖等もあり、保護者の皆様にもご心配をおかけしております。本日、創立40周年記念体育祭の結団式の予定でしたが、5月2日へと延期しました。残念な気持ちもありますが、前向きにとらえ、またしっかりと準備をしていきたいと思います。無事、5月15日(日)に開催できるように、皆さんで感染対策や体調管理に気をつけながらすすめていきたいと思います。ぜひ、今後ともご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
　学級閉鎖のクラスや自宅待機の続く子たちへのオンライン授業も行っております。学習の保障はもとより、オンラインであっても「繋がり」を大切にしていく御陵中でありたいと思います（※写真は、3年2組社会科のオンライン授業の様子です）。

　さて、『生き方の教科書』のサイマル・インタナショナルという会社の専属会議通訳者である長井鞠子(ながいまりこ)さんの「準備と努力は裏切らない」からです。

　あれはたしか四十歳くらいの時だったと思うんですけど、あるシンポジウムで同時通訳の仕事があったんです。私が担当する人の原稿は四十ページにも及ぶ長文でした。でも、その人の持ち時間は二十五分だったんです。だから、私はそれを見た時に、原稿通りには絶対読まないと思ったし、全く知らない話ではないから、ザーッと斜め読みしただけで本番に臨みました。いま振り返るとそれが甘かったんですね。油断していたんです。
　その人はどうしたかといったら、持ち時間なんか無視して、四十分くらいしゃべったんです。それも原稿をほとんど飛ばさないで、ものすごく早口で。その時の通訳は自分でも情けないくらい大失敗に終わってしまいました。
　後日、クライアントからサイマルにクレームが入りました。「長井の通訳はできていなかった」と。もうショックでしたね。それまでそんなこと言われたことがなかったから。さらに、ちょうどその頃、離婚も経験したんです。立て続けにショックなことが重なり、悔しいような悲しいような、何ともいえない気持ちでした。ただ、それでも次の日には別の仕事がありますから、いつまでも打ちひしがれてはいられません。
　そこで支えとなったのは母の言葉です。ちょうど私の誕生日に仙台に住む母から一通の手紙が届いたんです。そこには水遊びをする少女が写った新聞記事の切り抜きが添えられてこう書き記されていました。
「あなたの子ども時代を思わせる写真が載っていたので送ります。一人真っ先に濡れるのも構わず、一心に突き進んでいる姿といい、まさに鞠子そのもの。他の子どもたちは後ろでウジウジしているのです。頑張れ鞠子！！」
　当時はもちろんこの言葉には励まされたんですけど、数年前、部屋の片付けをしていた拍子にこの手紙が出てきて、読み返したらもう涙滂沱(なみだぼうだ：涙がとめどなく流れ出るさま)ですよ。その頃、母は亡くなっていましたから余計に感動してしまって…。母の偉大さと愛情の深さを改めて実感した瞬間でした。
　あの大失敗でちょっとでも準備をおろそかにしたらとんでもないしっぺ返しを食らうということを身にしみて感じました。逆に万全を期せばいい結果がでることが多い。ですから、あの日以来きょうまで、手を抜いた準備をしたことは一回たりともありません。
「準備と努力は裏切らない」
　これは私が四十年以上、通訳の仕事を積み重ねてきた中で実感していることです。

　準備と努力をすれば、すべて100％の結果が出るかと言われればそうではないかもしれません。しかし、準備や努力を怠ると往々にして「失敗」したり、まったくもって満足のいかないものになったりすることが多々あります。自分の準備不足や努力不足によって、自分へのしっぺ返しだけにとどまるならまだよいかもしれませんが、人に迷惑をかけるのであればそれはあってはいけません。
　たとえば、私は立場上、人前で話す場面が多々あります。急にふられた場合は別ですが、事前に話をすることがわかっている場合は、原稿を必ずつくります（多くの方が当たり前にされているとは思いますが…）。もちろん、棒読みは避けるようにはしていますが、言うべきこと、言わなければいけないことを言い忘れないようにと思っています。どこまでの準備をすれば完璧なのかはわかりませんが、とにかくできる限りのことは準備して臨むようにしています。一方でまだまだ未熟な私は、他のことでも、「これぐらいで…」と準備が甘くなることもあります。そうするとやはり、思うようにいかないことが多いです。「あ〜もっときちんとしておけば」と後悔します。
　今一度、「準備と努力は裏切らない」という長井さんの言葉を自分自身の胸に刻み、しっかりと日々の仕事をしていきたいと思います。