【5月13日】私の誇り
- 公開日
- 2022/05/13
- 更新日
- 2022/05/13
つぶやき
昨日放課後、かつてのバレー部の教え子が訪ねてきてくれました。
彼は以前、様々なところで紹介した、現在、バレーボールVリーグのとあるチームのコーチをしている子です。
中学時代は、朝練習はいつも職員すら出勤していないような早い時間に登校し、私が出勤すると、一人でネットを立て、ひたすらサーブ練習をしていました。母親から「そんなに早く行っても学校開いてないでしょ?」と言われると「とにかく、俺は上手になりたいから!少しでもたくさん練習をしたいから!」と突っぱねたそうです。小学校時代は、ジュニアでサッカーをしていて、兄のいたバレー部には入部しないと私は聞いていました。ところが、新入生対象の部活動紹介を見て、「バレーって楽しそう、それにバレー部はピシッとしている」と入部を決めたと話していました。彼が入学した年の夏の大会では、2・3年生の部員が合計11人でしたので、12番のユニフォームを一人だけ1年生につけさせることができる…夏の大会までに一番声を出し、ひたむきに頑張った1年生にユニフォームを与えると話をしました。
彼は、常に声を出し、全力で球拾いをし、真剣に練習に取り組んでいたました。ある練習試合で彼に「サーブだけになるけど、試合、出るか?」と声をかけると、目をキラキラ輝かせて「はい!お願いします!」と答えました。そして、生まれて初めてのバレーの試合に出場し打ったサーブは、ネットにかかりミス。ベンチに戻った彼は「すみませんでした」と私に謝りました。1年生の4月に始めたばかりですから、失敗しても私は気にしていませんでした。「オッケー。大丈夫」と言いましたが、彼の目には涙が…。そのあともしばらくとても悔しそうに泣いていました。バレーを始めたばかりで、サーブミスをしただけでこんなに悔しがるなんて…私は逆にとても素晴らしい子だと思いました。この子はこれから伸びていくなと思いました。その日の午後からの試合で、「もう一回、出るか?」と聞くと、真剣な表情で、「はい!ありがとうございます!」と。彼の放ったサーブは、ネットを越え、相手コートへポトリ。何とサービスエースとなったのです。そのときの彼の本当に嬉しそうな顔は今でも忘れません。
そして、彼が「12番」のユニフォームを着けて夏の大会に臨んだのは言うまでもありません。大会での出場機会はありませんでしたが、その後も彼は、ひたむきな努力を続け、2年生となったときには、キャプテンとなりました。本当によく練習しました。そして、どんなにきつくても苦しくても、根を上げることはありませんでした。また、準備や片付け、他チームの試合の審判なども率先して行う子でした。誰もが認める立派なキャプテンでした。
身長162センチのエースアタッカー兼セッターとして出場した最後の夏の大会の結果は、筑前地区ベスト8で、県大会出場には一歩届きませんでした。昨日も、そのときの夏の大会に負けたときの悔しさと、試合内容まで鮮明に覚えていることを話してくれました。それくらい頑張っていたのだと改めて思いました。
中学卒業後、高校はバレーの名門校へ。ひたむきに頑張る彼は、出場こそできませんでしたが、ベンチに入り、監督とともに対戦相手の分析をし戦い続けました。3年次にはインターハイ、国体、春高で日本一に輝く「三冠」を成し遂げました。大学に進んだ彼は、バレー部に所属しながら日本代表チームの指導にも関わるようになり、卒業後、Vリーグチームのコーチとして就任しました。
昨日彼が言っていました。
「あのとき、バレーをはじめていなかったら…先生方と出会わなかったら…今の僕はありません。だから、とても感謝しています。僕が出会う人たちは、皆さんとても素晴らしい人ばかりです。本当にありがたいです」
そして、今後の自分の生き方や方向性についても話してくれました。常に前を向き、常に向上心をもって日々過ごしている彼の話を聞きながら、本当に素晴らしい子だと、彼を誇りに思います。そして、リーグのオフシーズンの貴重な休みを使って訪ねてきてくれる子に関われた私は幸せ者だと思います。それと同時に、やるべき仕事は違っていても、彼に負けないように私も頑張らなければと思います。
彼の「人間性」は本当に素晴らしいです。挨拶も礼儀も気配りも本当に素晴らしいです。彼の人間性こそが、人を引き寄せているとも思います。今日放課後は、御陵中バレー部の練習に少し来てくれるようです。本当にありがたいことです。
最後に、以前学校便りにも載せた、彼の「部活動生に伝えたい言葉」です。
「試合に出るとか出ないとか…うまくできるかできないかとか…いろいろ考えるかもしれないけど、まずは与えられた自分の役割を精一杯果たすことが大事だと思う。それが、チームだし、みんなで戦うということだと思う。そのことが自分を伸ばすことにつながると思う。どんな状況であれ、他人のせいにせず、言い訳をせず、努力することが大切だと思う」
自分の身が引き締まる彼の言葉です。これは、スポーツだけでなく、すべての人の生き方につながる大切な言葉だと私は思います。