学校日記

【10月19日】子どもたちは素晴らしい!!

公開日
2022/10/19
更新日
2022/10/19

Kのつぶやき

 今日まで3年2組が学級閉鎖ということで、不安やもどかしい気持ちでいる子どもたちもたくさんいるのではないかと思い、少しでも励ましになればとオンラインで話をさせていただきました。私はこれまで、25回担任をさせてもらいました。その中で、合唱だけでも様々なドラマがありました。うまくいかないこと、思い通りにいかないことがたくさんありました。
 十数年前に担任した当時の3年生。歌が苦手な子、行事があまり好きではなく、なんとなく1・2年生の頃は一生懸命歌うこともなく過ごしてきた子たちが多くいるクラスでした。練習当初は、本当に「合唱」になっていませんでした。合唱曲は「花をさがす少女」という戦争をテーマにしたドラマチックな素晴らしい曲でした。しかし、本当に声は出ず、小さな声で棒立ちで、ただ伴奏と一部の一生懸命歌う子の声がさみしく響く…という状態でした。
 これではいけないと、実行委員や指揮者やリーダーたちが何度も何度も呼びかけていました。私も何度も話をしました。戦争についての学習もしました。詩の意味について考えました。話し合いもしました。子どもたち同士で声をかけあい、少しずつ少しずつ合唱になっていきました。詩の意味を考えて、表現できるようになってきました。毎日毎日1分1秒を大切にしながら練習するようになりました。
 しかし、あと1週間で本番というときに、「インフルエンザ」の流行で、私のクラスは3日間の学級閉鎖となったのです。学級閉鎖を告げると、欠席者の子どもたちを心配する一方、これからどうなるのかと心配で泣き出す子もいました。その日から誰もいない教室。他クラスの授業がないときに、誰もいない教室に行き、「あんなに頑張ってきたのに…」と恨んでも仕方ないインフルエンザというウイルスを恨みました。それと同時に、子どもたちはどんな思いで家にいるのだろうかと気になりました。他のクラスは、仕上げの段階に入り、熱のこもった練習をしている。他のクラスの歌声が響く中、いてもたってもいられなくなった私は、その思いを学級通信にしたためました。今のように「オンライン」でメッセージを届けることなどもできないので、家庭訪問しようと考えました。そのときのクラスの人数は40人、要するに40軒の家庭訪問を一日でしようと考えたのです。1軒1軒、各家庭を地図で探しながらまわりました。家庭を尋ねるとびっくりする子どもたちや保護者の方々。学級通信を手渡し声をかけると、嬉しそうに笑顔で「ありがとうございました!」と言ってくれました。
 途中で、40軒を一日で回ることがいかにたいへんかということに気づいた私でしたが、「休みの間、一日中CD聴いてます」「勉強しながらもずっとCDかけてます」「毎日一人でずっと歌ってます」「お風呂場で響きに気をつけて歌ってます」「鏡の前で口の開け方や表情に気をつけて歌ってます」…たくさんの嬉しく頼もしいコメントをもらいながら、そのことを励みに各家庭を訪問し続けました。
 学級閉鎖が解け、子どもたちが登校しました。登校するとすぐに私に家庭訪問のお礼を伝えてくれる子、感謝のメッセージを届けてくれた保護者の方々もおられました。そして、実行委員の子が前に立ち、みんなにこう言いました。
「私は、閉鎖中、何度も涙が止まらなくなりました。実行委員なのに、何をしているのだろう。学級閉鎖だからどうしようもないのかもしれないけど、実行委員として何にもできない自分が悔しくて悔しくてたまりませんでした。だけど、今日みんなの顔を見たら、すごく嬉しくて…みんなにめちゃめちゃ会いたかった。あと2日で本番だけど、とにかくできることを精一杯やりましょう。私たちのクラスでしか歌えない世界でたったひとつの“花をさがす少女”を、世界一心を込めて、歌いましょう。聴いてくださる人に私たちの思いを全力で伝えましょう!」
 そう言うと、自然とみんなから拍手が起こりました。「よーし、頑張ろうぜ!」「うん!がんばろ!」と、キラキラと目を輝かせ、残りわずかな練習に取り組んだ彼らを忘れることができません。合唱コンクール当日の朝練習の最後の1回。涙を流しながら歌っている人がいました。「心を込めて!」「しっかり息を吸って」「体全体で表現して!」、もうそんなことを言う必要もないくらいの合唱になりました。
3年生8クラス中の最後を飾る「花をさがす少女」。一言一言に全身全霊を注ぎ歌うその歌は、戦争の悲惨さ、無情さ、悲しさ、そして平和への願いが伝わる感動的な合唱になりました。結果、金賞ではありませんでしたが、聴いている方がたくさん感動して涙するような素敵な合唱でした。次の日、保護者の方々から感動と感謝を伝えるメッセージをたくさんいただきました。
 そのときの指揮者の子は「合唱コンクールは“コンクール”ってついているけど、賞をとるためだけのものではないと思いました。誰かのために歌い、そしてクラスがまとまって思いを届けるためにあると思います。でも私の中ではうちのクラスが“金賞”です!…」。実行委員の子は、「金賞はとれなかったけど、みんな頑張ったからそれでいい、中学最後の合唱コンをみんなとできてよかった。まじ感動した!悔し涙もあったけど嬉し涙も流せた。本当にいい思い出ができたし、20年後、30年後、笑って話せると思う。私は、先生のため、みんなのため、家族のため、聴いているすべての人のために歌いました…」。当初、合唱の練習に意欲的ではなかった子の一人は、「こんなに合唱を頑張ったのは人生で初です。最初はやる気のなかった僕ですが、合唱がこんなに楽しいとは思いませんでした。やっぱり頑張るっていいですね!」そんなメッセージを書いてくれました。

 子どもたちはいつの時代も素晴らしい。御陵中の子どもたちも本当に素晴らしい。今、精一杯、明後日の創立40周年記念文化祭へ向けて練習しています。その成果をぜひご覧いただきたいと思います。コロナ禍、制限はしていますが、その中でご都合のつく方のご来校を心よりお待ちしております。