【12月1日】愛情
- 公開日
- 2022/12/01
- 更新日
- 2022/12/01
Kのつぶやき
いよいよ12月となりました。学校では2学期の締めくくり、そして2022年の締めくくりとなりますので、これまでの取組等を振り返りつつ、子どもたちが健康で明るく新年を迎えられるようにしていきたいと思います。現在、全学年の三者面談も行われていますので、何かご相談等あれば、ぜひ気軽に各担任へご相談いただければと思います。
さて、「クロマグロの完全養殖」「近大マグロ」で有名な近畿大学の名誉教授、熊井英水さんの「不可能を可能にするための三条件」について書かれたものがあります(※『1日1話読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』より)。
この三十二年間、もうダメじゃないかと絶望しかけたことは何度もありました。ただ、その時その時、発生するいろいろな問題について、脳みそのない頭で考え、そして所員の英知を結集する。そうやって一つずつクリアしていったということですね。そんな中で自らを支えたのは、やはり「不可能を可能にするのが研究だ」という初代総長からいただいた言葉ですね。
私が二十五歳の時でした。ある日、総長から「昆布の養殖をやってみないか」と言われたんです。それに対して私は「そうは言っても、昆布は北海道のものですから無理ですよ」と難色を示してしまった。そうしたら後日、総長から手紙が来ましてね。中に新聞の切り抜きがあって、兵庫県の水産試験場が瀬戸内海で昆布の養殖試験を開始したと書かれていました。それですぐに総長に謝ったのですが、その時に言われたのがこの言葉だったんです。私はハッとしましてね。それ以来、今もなおこの言葉を信条にしています。
不可能を可能にするために大事なことの第一は「忍耐」。やっぱり研究でも仕事でも、何かを成し遂げようと思ったらいいことも悪いこともあるわけです。その時に何が何でもやり通すんだという忍耐、ブレない継続、これが非常に大事だと思います。私の好きな言葉に「一志一道」というのがありますが、一度志を立てたらこれを一筋にやり続けないといけません。
二つ目は「観察眼」。原田先生(“近大マグロの父”原田輝雄さん)がよくおっしゃっていたのは「魚に聞け」ということです。魚は言葉を発しない。だから抗議するときは死んで抗議する。だから、いまこの魚はどういうアピールをしているのか、何を求めているのか、それをよく観察し、知るのが本物の研究者だと。
そして、最後は「愛情」。やっぱり手間暇をかければかけるほど、魚は我われ飼育している者の意思をわかってくれるし、よく育ってくれるんです。
完全養殖したクロマグロを初めて出荷する時、「どういう気持ちですか」って新聞記者に聞かれました。私は「わが子を嫁に出すような心境だ」と言ったんですけど、本当にわが子を育てるような気持ちがないとあらゆる仕事は成功しないと思います。
近畿大学水産研究所のHPで確認すると以下のようなことが書かれていました。
クロマグロは大きいものでは、全長3 m・体重500 kgまで成長するマグロの中で最大。また、最も味が良く、高値で取引されているため、近年は乱獲により個体数の減少がみられる。その対策として、世界的に捕獲量の削減措置や養殖魚も流通されている。しかしそれは天然の稚魚を捕獲して育てたものであるため、稚魚の乱獲が進めばやがて養殖魚も減少していくことが予想される。そこで、人工ふ化した仔魚を親魚まで育て、その親魚から採卵し、人工ふ化させて次の世代を生み出していく技術「完全養殖」が非常に重要である。
1970年から始めたこの研究が、粘り強い研究者たちのおかげで32年という長い年月をかけ、2002年に成功したとのことです。クロマグロは、非常にデリケートな魚で生態もあまりわかっていなかったために、これだけの時間を要したと書かれていました。
「32年」と文字では簡単に書けますが、これだけの長い時間、諦めずに続けてこられた方々に敬意を表します。そして、その成功の秘訣が「忍耐」「観察眼」「愛情」だったということです。このことはマグロの養殖の成功に限らず、私たち教師の仕事にも、そして他の仕事にもとても通じることだと思います。私たち教師は改めて、子どもたちをしっかりと見て耳を傾けて、粘り強く、そして大きな愛情をもって接していきたいと思います。