学校日記

【12月20日】創り出すために必要なもの

公開日
2022/12/20
更新日
2022/12/20

Kのつぶやき

 強い寒気により、凍えるような寒さが続いています。福島県や新潟県では記録的な雪が降ったとのこと。新潟県柏崎市の国道8号では一部で車の立ち往生や渋滞が発生し、約22キロが通行止めになったとの報道があっていました。福岡でも週末はまた強い寒気で「雪」の予報も出ているようですので、道路状況等も含め引き続き注意が必要だと思います。

 さて、2018年に亡くなられましたが、浅利 慶太さんという方をご存じですか?劇団四季の創設者であり劇団代表兼演出家として、ウエストサイドストーリーやライオンキングなど多くの作品のプロデュースと演出を手がけた方です。また、1998年の長野冬季オリンピックの開閉会式のプロデュースと演出も手がけられました。その方の言葉が、『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』に載っていますので、抜粋します。

 僕は防空壕の中で縮こまりながら生きてきた世代です。終戦の年は中学1年生で戦後の大混乱期です。育てられたという意識はないし、時代の激動に対応して自分が必死になって生きて、育ってきたという感じですね。だから四季での僕の指導はまさに体当たりですよ。思ったこともズバズバ言うし。ただ、基本だけみっちり教育する。
 ヤンキースの松井秀喜君でも、見ていると基本通りにやっていますよ。アメリカに行ってバッティングの基本をもう一度、自分の体にたたき込んでいるのでしょうね。あのくらいのプロフェッショナルでも一番必要なのは、やはり基本なんです。演劇でもそれができていない子は伸びない。ただ、好きなだけという子は稽古が辛くなるとすぐに辞めてしまいます。伸びるのは、逆に根性を持って自分の夢を実現しようとするタイプでしょう。
 僕はオーディションの時に「十年間辛抱できますか」と質問します。誰もが「できる」と答える。でも、実際は一年以内に多くの子が辞めていってしまいます。俳優とは人それぞれで伸びるテンポが違うので、自分だけの時計を持たないといけないんです。ところが「私はなぜあの人のようになれないのだろう」とついつい他人の時計をのぞいて、自分を見失ってしまうんですね。逆に、不器用でも十年から十五年やっていると自然にテクニックが身について上手くなっていくものです。二枚目でなくて声もいまひとつで、身体能力も高くなくて、あるのは根性だけという子でも、十年地道にやると結構いいバイプレーヤーになります。しかも器用でない分苦労し、人格的に深みが出てくる。ですから、訓練に耐える力も、じっと待つことができる力も、芝居を愛し続ける資質もすべて才能なんです。
 先日も新入団員たちを前に話をしたのですが、「君たちは今までは公平に扱われる社会で育ってきた。だが、これからは違う。四季の敷居をまたいだ途端に不公平な社会に入ったんだ。競争社会の中でこれからは扱われるんだよ」と。僕は何でも育ててやるという戦後教育の公平感は間違いだと思うし、それは恐るべきことですよ。社会環境が豊かすぎるのもいいことばかりではない。優しい環境を与えてやれば人が育つというのは誤解ではないでしょうか。「好きなだけの子は伸びない」という話とは、いささか矛盾するようですが、「好きこそものの上手なれ」という言葉もあるくらいで、やはり情熱でしょうね。情熱を持った人間が何かを創り出していく。あるいは狂熱といってもいいかもしれない。不可能と思われることでも、それに執着する強い情熱ですね。

 「十年間辛抱できますか?」と問われた浅利さんは、「本気や覚悟」と「情熱」を問われていたということです。浅利さんだけでなく多くの方が「苦労や困難を乗り越えたあとの成長や成功」のことを言われています。私もそう思います。人生においては、理不尽なこと、不平等と感じること、頑張っても頑張っても上手くいかないことなど様々なことがあります。時には、人と比較をして「あの人はできるのに、なんで自分は…」などと思い、やる気や目標を失いかけることもあるかもしれません。それでも私たちは、志をもち、粘り強くやり続けることが大切なのだと思います。そこには、やはり「情熱」や「やる気」が必要です。
 子どもたちには中学校時代にたくさんのチャレンジをしてほしいと思います。チャレンジするからこそのたくさんの失敗も経験してほしいと思います。その中から学ぶことはたくさんあります。粘り強く取り組む力、失敗から立ち上がる力、しなやかな強さ(レジリエンス)などを身に付けることが、これからの時代をたくましく生き抜いていくことに繋がると思います。