学校日記

【2月2日】人は誰しも…

公開日
2023/02/02
更新日
2023/02/02

つぶやき

 昨日、ある先生からある生徒の描いた絵を見せてもらいました。とても上手でこんなにも素晴らしい絵が描けることに本当にびっくりしました。どちらかというと日頃は、自信がなさそうにしている子なのですが、絵もたいへん上手だし、もっと好きなことは料理なのだそうです。その話を聞いて私は、とても感動しました。人間誰しも、それぞれに得意なこと、その人にしかできないことがある、その人にしかない素晴らしさをみんなもっている。そのことをこの生徒から改めて教えてもらった気がしました。

 言の葉(ことのは)墨彩画家の「ひろはまかずとし」さんという方の言葉が、『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』の中に「あなたの一だけをひたすら書きなさい」というタイトルで載っています。

 実は私は、子どもの頃から字が下手でした。普段書く字はもちろん、書道も絵も、通知表の評価ではいつも1か2でした。そういう人間がいま、言の葉墨彩画家としてたくさんのファンの方に恵まれ、一定の評価を得ています。書家や画家の方から一度も非難を浴びたこともなく、むしろそういう人たちの中にも私のファンの方がいます。この事実は、とても大きな教訓を含んでいると思うのです。
 中学時代のある日のことでした。国語の先生がお休みで、代わりに教頭先生が授業を受け持ってくださったことがありました。教頭先生は「きょうは習字をやろう」とおっしゃり、字の嫌いな私が憂鬱な思いを抱いていると、教頭先生は半紙を一人二十枚ずつ配り、
「横棒の一だけを書きなさい。一に決まりはないから、何も考えずにあなたの一だけをひたすら書きなさい」
 とおっしゃったのです。教頭先生は黙々と書き続けている生徒の周りを回り、各々の字を褒めては頭を撫でてくださいました。私はその時間中に三十回くらい頭を撫でられました。文字で褒められたことのない人間が、一という文字を書いただけで褒められた。私にとっては、目から鱗(うろこ)が落ちるような嬉しい体験でした。
 教頭先生は授業の終わりにこうおっしゃいました。
「文字はすべて、この一の組み合わせなんだよ。だから、素晴らしい一を書ける人間に素晴らしい字が書けないわけがない。書けないのは、格好いい字を書こうとか、見本通りに書こうと思うからで、一本一本思いを込め、愛を込めて書くだけで、自分にしか書けない素晴らしい字が出来上がる。このことは、人間の生活すべてに当てはまることなんだよ」
 その教頭先生の言葉がいまの私の創作活動、そして人生を支え続けてくれていると言っても過言ではありません。

 やはり子どもたちには無限の可能性がある。子どもたちに、限りない可能性があることを教えてあげる、子どもたちが自分に自信をもって生きていけるようにすることが私たち教師のそして大人の役目なのだと思います。
 そのためにも、子どもたち一人一人をしっかりと見て、よさに目を向ける。そして褒めるときはしっかりと褒める(もちろん、時には叱らないといけないこともあります)。私たちの一言が、子どもたちの人生の大きな力になったり、生きる指針になったりすることがある、そのことを私たちは肝に銘じておかなければなりません。
 私はこれまでたくさん失敗してきました。一方で、「先生のあのときの言葉で頑張れました」「先生のおかげで今があります」などと言ってくれる教え子や保護者の方がいらっしゃいます。本当に有り難いし、感謝の気持ちでいっぱいになります。毎年毎年、たくさんの素敵な子どもたちと出会える素敵な仕事です。これからも子どもたち一人一人を大事にしながら、子どもたちを笑顔にし、希望や勇気が与えられるような声かけや関わりをしていきたいと思います。