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【9月5日】人間の目

公開日
2024/09/05
更新日
2024/09/05

校長のひとりごと

 9月2日付、日本教育新聞のコラム『不易流行』からです。


 人間の目は本来、近くのものばかりを見るようにはできていない。古(いにしえ)の人々は、遠くの獲物のわずかな動きを察知したり、地上の照明など全くない漆黒(しっこく)の夜空の星を眺めたりと、今よりはるかに遠くの景色を見る機会が多かったのではないか。

 現代社会は、パソコンやスマホの画面など、近くを見る時間が増え、遠くの景色を眺めることが少なくなった。時には、流れる雲や遠くの稜線(りょうせん:山頂と山頂との間に連なる高い部分)をゆったりとした気持ちで眺めることで目も心も癒されるだろう。ジグソーパズルを近くから1ピースだけ見ると、それが何を表現しているのか分からない。しかし、離れた所から見ることで、その全体像を把握できる。山の姿は、登っている人にはわからないが、遠くから眺める人には、よく分かることとも似ている。

 夏休みが明けた。それを待ち望んでいた子どもがいる一方で、つらいと感じている子どももいるだろう。落ち込んだときには、視点を変えることで、ふと気持ちが軽くなることもある。人間がつらく感じるときは、先に希望が見えないときだろう。近くの今を見る目と、遠くの未来を見る目をバランスよく持つことの大切さを伝え、希望を語ることで、つらい気持ちが和らぐ子どももいるのではないか。今がつらいのであれば、今だけを見ることはない。人間の目は、遠くを見ることもできるものなのだから。


 9月3日のひとりごと「プラストーク」の中で、常に前向きな言葉を発したり、ポジティブな姿勢で行動していったりすることの大切さについて紹介しました。ところが、私のような未熟者は、時々、ネガティブになったり、弱音を吐いたり、後ろ向きな気持ちになることがあります。私は、人間の弱さを認めることも大事だと思っています。それでも、人間には乗り越える力があると思いますし、決して一人ではないし、支えてくれる人、応援してくれる人がいることをそのたびに実感します。

 子どもたちも同じように、弱気になったり、自暴自棄になったり、自分のことが好きになれず何もかもがいや…なんて思いを持つ子もいると思います。だからこそ、私たち大人が、しっかりと子どもたちの思いを受け止め、「今」の苦しさやつらさだけにとらわれることなく、その先の明るい未来、希望の未来を語り、一緒によりそい前に進んでいくことが大切なのだと思います。人間の目が近くも遠くも見ることができるように、心も広く深いものだと思います。


 子どもたちが「未来」を担っていきます。すべての子どもたちにかけがえのないよさがあり、無限の可能性で溢れています。それを引き出し、支えていくのも大人の役目だと思います。

 子どもたちの笑顔は「宝」です。そんな宝をたくさん見ることができるように、「今を精一杯に生きることの大切さ」を伝え、「希望や未来」を語れる大人でありたいと思います。