【11月17日】幸せを育む
- 公開日
- 2025/11/17
- 更新日
- 2025/11/17
校長のひとりごと
先週金曜日、私が出席した研修会では、九州自然動物公園アフリカンサファリ園長の神田岳委(かんだいわい)さんの講演が行われました。
神田さんは幼少期の頃から動物が大好きで、近所の人々に恐れられていたどう猛な秋田犬「ふじ」にも愛され、その背中に乗っている姿から「ふじに乗った少年」と呼ばれるほどでした。小学校4年生のときに父が川に捨てられていた柴犬を拾ってきたことで、犬を飼うようになり、さらに動物好きは加速していきました。あるときから、動物を助ける「獣医」になりたいと考えるようになり、日本獣医畜産大学に進学し、ひょんなきっかけでアフリカンサファリの獣医となりました。当時、神田さんの他にいたもう一人の獣医さんがいなくなり、たった一人になった神田さん。1年365日のうちの360日は、仕事に出ていたそうです。ライオンの雌に引っかかれ、胸の骨が見えるほどの大けがをして、そのことを誰にも言えず、自分で麻酔をし、自分で縫合するという信じられない経験。さらには、ぞうやきりん、様々な動物の治療にあたったり、生死を目の当たりにしたりしました。神田さんの一生懸命さ、仕事に対する熱意も認められ、周りの方からの信頼を得て「神田さん」から「先生!」と呼ばれるようになり、現在は園長もされています。
動物園などでの、ぞうの出産は「相性」の関係からもとてつもなく難しいそうなのですが(100年間で九州・沖縄では3頭しか誕生していない)、アフリカンサファリではこれまでに2頭の出産に成功しているそうです。それぐらい神田さんは動物のことを知り尽くし、何より愛されているからこその偉業だと思いました。様々な経験をされてきた神田さんは、こんなことをおっしゃっていました。
■私のモットーがあります。それは「動物に対して、自分がされてうれしいことをする」ということです。「○○ちゃん、おはよう!」と挨拶をしたり、優しい声かけをしたりすることを常に心がけています。そうすると、動物たちは喜ぶんです。長くつきあっているとそれが分かります。
■動物の「飼育」と言いますが、「飼」という字は、「食を司(つかさど)る」と書きますね。そして「育」は「育つ、育(はぐくむ)む」ですから、単に、餌をあげるというだけではなく、幸せにしてあげることだと私は思っています。先生方は「教育」に携わっておられます。ですから、「教育」とは「教えるだけではなく、幸せを育むことができるようにする」ことではないかと私は思います。
そのためにも、私たちは相手の立場に立って「想像」すること。そして、たくさんの「経験」をすることが大事なのではないかと思います。
神田さんのお話は、私たちの知らないとても興味深いものばかりでした。ユーモアも交え、「命の大切さ」、「仕事への誇りや責任」、「動物たちへの深い愛情」などたくさんのことを教えていただきました。
私は、神田さんの「教育とは、教え、幸せを与え育むことである」という言葉がとても胸に刺さりました。私たちの仕事は、子どもたちを笑顔にし、夢や希望を与えることだと思います。これからも、「誰かの役に立つ幸せ」「与える幸せ」の尊さを、子どもたちと共に考えながら、共に成長していきたいと私は思います。
[ひとりごと 第1115号]