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【11月26日】もし…

公開日
2025/11/26
更新日
2025/11/26

校長のひとりごと

  今朝の西日本新聞のコラム『春秋』からです。


 誰かの一言で人生が変わることがある。もしあの時「ハロー」と声をかけていなかったら。関西大相撲部の主将を務めていた山中新大(やまなかあらた)さんは振り返る。「改めて運命というか、すごいことだなあ、と思います」

 出会いは2019年の国際大会。ウクライナの選手があまりにも強く「ハロー。強いね。何歳?」と英語で尋ねた。「15歳」との返事にびっくり。「彼も年を聞いたので英語で20歳、と答えたつもりだったのですが、12歳って聞こえたみたいなんですね。彼の方も驚いたみたい。12歳でこんなにでかいのか、と」。山中さんがほほ笑ましい会話を関西大のサイトで紹介している。ダーニャと呼ばれた少年は現在の安青錦関(あおにしきぜき)。九州場所で初優勝し、きょう正式に大関昇進が決まる。

 22年2月、ロシアが母国に侵攻した。先行きは見えない。このままでは大相撲の力士になる夢が絶たれてしまう。「死ぬ時に後悔したくない」。交流サイト(SNS)で山中さんに連絡し、下宿させてもらえることになった。18歳になれば徴兵対象となり、出国が難しくなる。誕生日まで1カ月を切っていた。もし既に18歳になっていたら。もし山中さんとつながっていなかったら。人生は「もし」の連続なのだと改めて思う。

 もし侵攻がなければ。多くの若者がダーニャのように夢を追いかけていたに違いない。土俵で生きる覚悟を決めた新星は、同胞の思いも背負っている。


  優勝を決めたあとのインタビュー。「優勝、おめでとうございます!」とアナウンサーに言われた安青錦関は、「ありがとうございます」と言ったあと、深々と丁寧に四方に一礼をしました。観客席からは大歓声が沸き起こりました。その様子を見て、「礼儀正しい」「なんか武士みたい」「青い目のサムライ」などの反響が相次いだそうです。また、化粧まわしには、キース・へリングの作品がモチーフとなった2人の人間が地球を支えているような絵がデザインされています。これは、安青錦関が母国ウクライナから逃れて来日し、相撲をとっている背景から平和への願いが込められているとのこと。すなわち、キース・へリングの作品が持つ「深い人間愛と愛の精神」というメッセージが、安青錦関の姿と重なり、コラボレーションが実現したそうです。

 「自分が勝つことで故郷(ウクライナ)に勇気を届けたい」そして、「平和な場所で相撲が取れることへの感謝を忘れない」という強い思いをもった安青錦関。謙虚でストイックに練習にも取り組み、その相撲は「前傾姿勢で正面からぶつかる相撲スタイル」。彼のひたむきさ、笑顔や人間性、その上の実力もあいまって、人気の力士となりました。目指すは横綱。これからのますますの活躍に期待したいものです。

 ところで…

 コラムの、「人生は『もし』の連続」との言葉が胸に刺さりました。私の人生の中でも「あのとき、もし…」と思うことがいくつもあります。「もし、〇〇さんと出会わなかったら…」「もし〇〇先生から、~と言われなかったら…」「もしあのとき子どもたちが~と言ってくれなかったら…」「もし、あのとき、~のようなことが起きなかったら…」。皆さんにもきっとそんなことがたくさんあるはずです。

 人との出会い、言葉との出会い、物事との出会い…様々あります。自分自身が日頃から、学ぶ姿勢をもっていたり、努力し続けていたり、謙虚な姿勢、感謝する気持ちを持ち続けてしたりすることが、よい「出会い」を生むのではないかと私は思っています。

 そしてもちろん、困難や苦しいこととの出会いも「必ず意味がある」と受け止め、前向きに対応していくことで、自分自身の成長や、その後の人生の糧になると思います。


(ひとりごと第1121号)