【11月27日】ほんもの
- 公開日
- 2025/11/27
- 更新日
- 2025/11/27
校長のひとりごと
11月24日付、読売新聞のコラム『編集手帳』からです。
温暖化が進み、雪が減って困るのはスキー場とは限らない。
〈雪女 必死で取り組む SDGs〉。
作者は中学生という。鳥取県堺港市の妖怪川柳コンテストで入賞した作品の一つである。
「ゲゲゲの鬼太郎」を残した妖怪漫画の大家水木しげるさんの故郷で行われてきた川柳コンテストが、今年を最後に幕を下ろすことになった。世の変化を映す理由に驚いた方は少なくないだろう。生成AI(人工知能)で作成したかどうか、見分けるのが難しくなったためだという。似通った作品が応募される危惧が膨らんだようだ。
民俗学者として文化勲章を受賞した小松和彦さんが著書に記した一節を思い出す。
〈人間は創造する。その想像力はまた、さまざまな文化を創り出す創造力でもある〉(「妖怪学新考」講談社学術文庫)。
妖怪を題材にして人間が存分に想像力と創造力を競ってほしいイベントで、まさかの結末が待っていた。
雪女の困った顔を想像しつつ、うんうんなって五七五に落とし込むからこそ、楽しかったのではないか。俳句、詩歌、随筆、小説…他の文芸も同じだ。AIのおせっかいが、すさまじい。
11月25日の西日本新聞のコラム『春秋』には、埼玉の写真コンテストで最優秀作が取り消されたことが載っていました。外部からの指摘で人工知能(AI)による生成と判明したからだとのこと。昨夜のニュースでは、宮城県女川町も公式ラインなどで「熊の写真」とともに注意喚起が行われたが、のちにこの写真が生成AIによるフェイク画像だと判明し、町が謝罪する結果となったことが報道されていました。
生成AIは本当に便利です。感動するくらい素晴らしいものです。しかし、フェイク画像やフェイク動画、そしてコラムにもあるように様々な作品にまで生成AIが使われるようになりました。もはや素人の私たちではまったく本物か偽物(生成AIでつくられたもの)かがわかりません。大切な人間の営みが「生成AI」によって、なくなっていくことは悲しいことです。以前から言われていますが、学校においてもたとえば「読書感想文」。本を読まなくとも一瞬であらすじをまとめることも、感想文を作成することもできます。もちろん、それを完全に見抜くことも難しいと思います。
便利になりすぎたおかげで、様々な不正が行われたり悪用されたりすることもあります。困ったことがあればすぐに使える生成AIですから、じっくり考えることをせず思考力が低下したり短絡的になったりすることもあると思います。
便利なものを上手に使う。どうしようもないときのサポートとして活用する。場合によってはあえて使わずにじっくりと考え、じっくりと取り組むことも大切なのだと思います。それにしても生成AI…恐るべしです。
(ひとりごと第1122号)