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【12月3日】大志を抱け!

公開日
2025/12/03
更新日
2025/12/03

校長のひとりごと

 11月24日付、日本教育新聞の『こころに響く校長講話』に載っている札幌市立三角山小学校の紺野高裕校長先生が卒業前の6年生への講話「人としてあるべき姿」からです。


 今日は約150年前に北海道に来た、ある先生のお話から、もうすぐ卒業していく皆さんに伝えたいことがあります。その先生は、クラーク博士です。北海道大学の前身、札幌農学校で教えていた方です。先生が母国に帰る時、教え子に残した「少年よ、大志を抱(いだ)け」が有名です。

 実はこの言葉には続きがあることを知っていますか。クラーク博士は、私たちが抱くべき大志、つまりは大きな目標についてこう続けています。

「それは金銭や名声というむなしいもののためであってはならない。人間としてあるべき全てのことを、達成しようとするために大志を抱け」

 一体どういうことでしょうか。お金持ちや有名になりたいという目標だけでは、本当の大志ではないということです。本当の大志とは、「人としてあるべき全てのことを達成すること」なのです。

 例えば、「将来、医者になりたい」という夢は素晴らしい目標です。しかし、その目標の奥にあるものが大切です。それは、「病気で困っている人を助ける優しさや知識を身に付ける」「人の命に真剣に向き合う責任感や誠実さを学ぶ」などの人としてのあるべき姿です。皆さんの「テストで良い点を取る」「試合に勝つ」といった目標も、全てこの「人としてあるべき姿」につながっています。

 目標を持つことは、自分自身を素晴らしい人間に「育てていく」ことなのです。「さあ皆さん、将来の夢は何?」と聞かれたとき、ただ職業を答えるだけでなく、「その夢をかなえることで、どんな人になりたいか?」という、もっと大きな志を、胸に抱いてみてください。

 「人としてあるべき全てのことを達成する」というクラーク博士の言葉を心に留め、今日一日、そして小学校を卒業したこの先の毎日も、大切に過ごしていくことを願っています。


 本校の教育目標にも「志」と入れています。その「志」は、「単なる個人の『願望』や『夢』を超えて“人々のために”“人の役に立ちたい”という気概(きがい:「困難な状況に対しても屈せず、自身の信念を貫く強い意志のこと)であり、厳しくも明るい未来へのチャレンジである」としています。

 私は、人間の究極の幸せとは、単にお金持ちになるとか、名声を得るとかではないと思っています。人の役に立つとか、人を笑顔にしたり喜んでもらえたりすることだと思います。「夢」という言葉も大好きなのですが、単に「夢」というと個人的な目標にとらえることもあるので、あえて「志」という言葉にし、そこに意味づけをしています。

 私は以前、子どもたちに「将来の夢は?」と聞くことがよくありました。そのときの私のイメージは「なりたい職業」を指していました。しかし、あるときから職業ではなく、「どんな大人になりたいか?」を尋ねるようにしました。もちろん将来なりたい職業が自分の中にきちんとある子もいますが、「まだわかりません」という子どもも多いです。それにどんな職業に就くかが問題ではなく、どんな職業であったとしても、どんな大人になりたいのか、どんな生き方をしたいのかこそが大切だと思うのです。

 ですから、子どもたちには中学校時代に、学校での授業、行事や様々な活動での学び、友だちや先生方との関わりの中での学び、家庭や地域の中での学びなどを通して、たくさんのチャレンジや失敗を繰り返しながら成長し、可能性を広げていってほしいと思っています。


(ひとりごと第1127号)