【3月2日】キャッチボール
- 公開日
- 2026/03/02
- 更新日
- 2026/03/02
校長のひとりごと
いよいよ今週から「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC(WBC)」が始まります。2023年のWBCでも物凄い感動的なドラマで日本チームが見事優勝を飾りました。今回はどんな素敵なドラマが待っているのか多くの方が楽しみにされているのではないかと思います(あいにく、地上波での放送がないことが残念ではありますが…)。盛り上がっているプロ野球界ではありますが、その中でも多くの人の記憶に残る「ミスタープロ野球」と呼ばれた方がいます。そう、長嶋茂雄さんです。人間学を学ぶ月刊誌『致知』の「千年の名言」という作家の五木寛之さんのコーナーがあります。そこに長嶋茂雄さんのことが書かれていましたので紹介します。
長嶋茂雄さんほど日本人に注目された人物はいないのではないかと思う。世を去ってから現在まで、長嶋茂雄のイメージは、繰り返しメディアでとりあげられてきた。大谷翔平選手がいかに話題を独占しようと、長嶋茂雄の記憶は人々の心に深い記憶として残って消えないだろう。文字通りのレジェンドである。
私は彼が世を去る数年前に、一度だけ対談に招かれて言葉をかわした。実際に対面したミスターは、偉大なスポーツマンというより、配慮にたけた社会人、といった印象があり、ちょっと意外な気がしたことを覚えている。私の先入観では、ミスターと呼ばれる伝説の英雄は、それこそ常識ばなれした型破りの個性の持ち主のように予想していたのだが、それはお会いした時間からたちまち崩れ去って、配慮のいきとどいた中年の社会人といった印象に、意外な気がしたことを覚えている。長嶋さんは、初対面の私に何冊かの本の名前をあげて感想を語った。「本をよくお読みになるんですか」と、失礼な私の問いかけに、ミスターはさらりと「合宿練習のときには、2、3冊の本は必ずもっていきます」と答え、私の何冊かの本の読後感を早口で語った。それはちゃんと的を得た意見で、自分自身の感想であることはすぐにわかった。
話が野球についての私の意見になり、長嶋さんは、体を乗り出して語り始めた。
「五木さんのご本に『他力』というのがございますよね」
「はい、ありますけど、あれは少し仏教的な内容なんですが、どうお感じになりましたか?」
「わたくしは非常に共感するところが多くありましたね。やはり、野球も〈自力〉だけでは駄目なんだと」
「なるほど。でも、スポーツは自力の要素が大きいんじゃ…」
「そうでもありません。ひとりじゃキャッチボールもできませんから」
「なるほど」
「こっちが投げたら、必ず返してもらう。つまり人生そのものが、キャッチボールのように思うのです」
「はい」
「キャッチボールだって、ひとりじゃできないですから」
「なるほど」…(後略)…
長嶋さんは「温かい人柄」や「ファンを大切にする」ということでたいへん知られていました。常に「野球というスポーツは一人ではできない」という気持ちで対戦相手にも敬意を払っていました。「自分が打てるのは、投げてくれる投手がいて、守ってくれる野手がいて、応援してくれる人がいるから」という哲学をもたれて野球に打ち込まれていたと聞きます。また、「ファンは、家計をやりくりしてチケットを買い、時間を作って球場に来てくれる。その人たちをがっかりさせて返すわけにはいかない」と、常に全力のプレーを心がけ、ファンサービスにも積極的でした。さらに、監督時代にも、なかなか結果の出ない若手選手やケガに苦しんでいる選手に、「それは無駄ではなく、新しい助けや新しい道につながる」と声をかけていたそうです。さらに、裏方さんにも「お疲れさん」「ありがとう」などの声かけを欠かさずしていたと聞きます。長嶋さんのそんな人柄や姿勢が世代を超えて愛され、人々の記憶にも残るレジェンドになったのだと思います。
偉大な方は、決して謙虚さと感謝の気持ちを忘れない人だと思います。そして誰よりも努力をする人、言い訳をしない人なのだと思います。そんな長嶋さんの人間性や姿勢にも学び、努力し、大谷選手をはじめ数々の日本人選手が世界で活躍するまでになっているのではないかと思います。そんな素晴らしい選手たちが集まるWBC…期待し、応援したいと思います。
(ひとりごと第1175号)