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【10月1日】仕事=量×質

公開日
2024/10/01
更新日
2024/10/01

校長のひとりごと

 人間学を学ぶ月間誌『致知』に、元モスフードサービス会長の櫻田厚(さくらだあつし)さんが寄稿されたものが載っていました。モスフードサービスといえば、もちろん多くの方がご存じの「モスバーガー」チェーンの会社です。

 モスバーガーの創業者は、櫻田厚さんの叔父にあたる櫻田慧(さくらださとし)さんという方です。慧さんは、会社を転々としながら、あるとき証券会社時代の後輩である方二人と、革製品を販売する株式会社『モス』を立ち上げました。しかし、会社はまったくうまくいきません。悩んでいたときに慧さんが思いついたのが、証券マンとしてロサンゼルスに駐在していたときに通ったハンバーガーショップ『Tommy's』だったそうです。

 この店は、当時は珍しかった注文を受けてから調理するアフターオーダー式、そして一度食べるとくせになるメキシコ風ピリ辛ソースのハンバーガーで大繁盛していました。慧さんは、そんなお店をやりたいと考えました。そこで、アメリカに2週間の修行に行かせてもらい、その店の経営者の方からアドバイスを受けたのち帰国しました。帰国してすぐ、ソースやバンズ、パティなどを一緒につくってくれるメーカーさんに何度も何度も思いを伝え協力してもらい、情熱をもって取り組んで作り上げたのが、現在の看板商品である『モスバーガー』なのだそうです。1号店のお店は、自宅近くの八百屋さんの2.8坪しかない倉庫を頼み込んで使わせてもらったとのこと。厚さんは、その立ち上げに叔父である慧さんから誘いを受けて関わることになったそうです。そんな櫻田厚さんの言葉からいくつか紹介します。


◆(厚さんが高校2年生のときに父親が亡くなり、家が困窮し、お母さんがパートに出るようになったとき)私は母を少しでもサポートしたいと思い、昼は学校や部活動に通いながら、夜は、ウエーター、皿洗い、工場のハンダ付けなど様々なアルバイトをしました。きついこともありましたが、不思議と自分の境遇を他人と比較したり、世間を恨むようなことはまったくなく、自分が働くことが家族のために一番よい選択肢なのだという気持ちしかありませんでした。むしろ、一緒に働く方から社会生活はどういうものかなど様々な話が聞けてとても貴重な学びになりました。

◆(モスバーガー開店当時は…)創業者(叔父の慧さん)の自宅に泊まり込んで出社。朝5時に起床し、6時前には店に着き、準備をして6時オープン。夜9時が閉店だったのですが、片付けや次の日のメンテナンスをしていると12時前に。そこから帰宅してまた5時に起きる。これを365日繰り返しました。…長時間働くことによって、お金も入りますがそれよりも、周りの人より早く仕事を覚えることができました。私は早く店長になりたかったので、仕事は「量×質」だと、周りの人よりも1.5倍長く働くことを心がけていました。質も大事なので、創業者に直接学ぶことはもちろん、例えば具材を食べやすく綺麗にカットできる人、常に気持ちのよい接客ができる人など、それぞれのポジションで一番上手だと感じた人に頼んで教えてもらいました。人より1.5倍働き、2倍の質を意識すれば「量×質」で普通の3倍の仕事ができると考えました。自分がその気になれば、“先生”は周りにたくさんいて、自分次第でたくさんの事を学んで成長できます。

◆(巨大なライバル店が近所に出店してきたとき)スタッフを集め、3つのことを伝えました。①今までも一所懸命にご近所や店内の掃除をしてきたが、明日からはこれまで以上にピカピカにしよう ②忙しいときには「早く商品をつくろう」という気持ちになりがちだが明日からは材料の仕込みから見直して完璧な商品をつくろう ③いつも来てくださるお客さまに対して、接客がぞんざいになっているかもしれないから、改めて最高の笑顔で接客して、モスに食べに来てよかった思っていただけるようにしよう、と伝えました。その精神を貫いたおかげで、お客さまから大事にされ、売り上げはどんどん増えていきました。のちにこの3つの精神が合言葉となって引き継がれていきました。

◆私の人生の原点をつくったのは、母親とのある出来事からです。私が3歳の頃、出勤する父親の靴を毎朝磨いていた母が、「厚、やってみなさい」と靴を磨かせてくれました。そして、小さな手で一所懸命に磨く私の姿を見て大好きな母が「厚はすごいね」と褒めてくれたんです。この褒め言葉によってスイッチが入った私は、「人を喜ばせること、笑顔にすること」が大好きな子どもになりました。私をここまで生かしてくれた道は、3歳の時にスイッチが入った「人に喜んでもらう道」「人を幸せにする道」です。それが会社の理念である「人間貢献・社会貢献」に繋がっています。


 私は大学時代にモスのテリヤキバーガーを初めて食べて、その味に衝撃を受けました。それからしばらくはモスに行けば、テリヤキバーガーばかり食べていました。現在では定番の「モスバーガー」が大好きで、たまに行くと必ず頼みます。そんなモスバーガーがたった2.8坪の倉庫からのスタートであること、そして、あのハンバーガーに込められた思い、そして見えないところで大事にされていることなどを改めて知り、また行きたくなりました。

 「運命を恨まず、逆境を人生の糧とすること」「自分自身が成長するためには、“量”と“質”の努力が大切であること」「見えるものだけを大事にするのではなく、見えないところにも気を配り、挨拶、整理整頓、掃除などを日頃から大切にすること」「感謝の気持ちを忘れず、お客さまや相手の方、周りの方、地域の方を含めたすべての人への思いやりの気持ちをもって常に接すること」「人を笑顔にする、人を喜ばせる幸せを大切にすること」…櫻田厚さんからたくさんのことを学ばせていただきました。