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【10月16日】知慮

公開日
2024/10/16
更新日
2024/10/16

校長のひとりごと

 田口佳史さんの『超訳 言志四録 佐藤一斎の「自分に火をつける」言葉』からです(一部抜粋)。


 いま、失意のどん底にある人は、喜んだほうがいい。自分自身を深く反省し、良い方向へと転じるチャンスが得られるからです。逆に、何もかも順調にいっている人は、「これはまずい」と心配したほうがいい。自分自身を深く反省する機会を逸するからです。このことを『言志耊(てつ)録 33』では、「得意の事多く失意の事少なければ、其の人知慮を減ず。不幸というべし。得意の事少く失意の事多ければ、其の人、知慮を長ず。幸いというべし」というふうに言っています。

 キーワードは「知慮」。先のことや細かいことまで考えを巡らせ、慎重に行動することの大切さを説いています。失意のときはそれが簡単にできますが、本当はうまくいっているときこそ「知慮」を働かせなければいけません。誰もが失敗の原因は突き止めようとするけれど、成功の原因についてはあまり考えないようとしないのでは? そこに落とし穴が潜んでいると心得てください。もっとも、一斎は「幸不幸とは順境・逆境といったものは、自分がそう思っているだけで、実体なんかない」としています。…人が「大変な逆境ですね。苦労しますね」と言っても、自分が順境にあると思えば、それは順境である。逆に、人が「すごいですね、何もかもうまくいって、順境ですね」と言っても、自分が逆境にあると思えば、それは逆境である。ようするに、順境・逆境なんてものは、自分がいまの状況をどうとらえているかによる。心の持ちようなんだと、一斎は言っています。たしかにその通り。世の中には、傍から見れば非常に苦しそうでも、「何事も経験。いい苦労をさせてもらってます」なんてケロリとしている人がいます。かと思うと、どう見ても恵まれた状況にあるのに、本人は「大変だ。つらい。苦しい」と言っている場合もあります。同じ状況にあっても、逆境にあると思えば逆境になり、順境にあると思えば順境になる、ということです。であれば、「人生には順境しかない」と思ったほうが、人生を明るく積極的に生きられます。ちょっとつらいことがあっても、それがありがたくも思えるでしょう。

 かのイチロー選手は、四十代になっても現役メジャーリーガーとして活躍できたのは、「スランプがあったから」だと答えています。けだし、名言ですね。


 「うまくいっているときこそ“知慮”を働かせなければならない」

 確かに、うまくいっているときは、成功の原因などをあまり考えることなく、そのことに甘んじている自分がいるかもしれません。そんなときに“落とし穴”があって、突然逆風が吹いてくることがある。だから、うまくいかないときだけでなく、うまくいっているときにも、知慮を働かせ、行動していくことが大切だと教えてくれているのだと思います。

 また、以前のひとりごとでも「心の持ちよう」については何度か載せましたが、その人の心の持ちようによって、その状況がプラスにもなるし、マイナスにもなるということです。そしてもちろん、逆境を乗り越えることで成長するし、どんな状況であっても物事を深く考えたり、克服するための努力をしたりして、その人の人間力を含めた様々な力もつくのだろうと思います。

 確かに、苦しいことやたいへんなことを乗り越えたときのことは、自分の中でもよく覚えているし、あとになってみると、そのときのことが大きな力となっていることって多いですよね…。