【5月31日】耳かき1杯
- 公開日
- 2023/05/31
- 更新日
- 2023/06/01
校長のひとりごと
今朝の西日本新聞のコラム『春秋』からです。
カンヌ映画祭で、日本のテレビでもなじみの深い2人が快挙を成し遂げた。男優賞に長崎県諫早市出身の役所広司さん。シリアスからコミカルまで幅広く演じる。もう一人は是枝裕和監督の「怪物」で脚本賞に輝いた坂元裕二さん。顔は知らずとも手がけたテレビドラマを見た人も多いのでは。出世作は社会現象になった1991年の「東京ラブストーリー」。その後も「それでも生きていく」「カルテット」などのヒット作を生んできた。大河の作品が海外でリメークされている。特に当時5歳の芦田愛菜さんが出演した「Mother」はトルコ、韓国、ウクライナ、中国などで現地版が大ヒット。昨年はスペインでも作られた。なぜ国境や言語を超越し心に響くのか。本人は密着番組でこう語った。
「10元気な人が100元気になるための作品はたくさんあるけど、僕はマイナスにいる人がせめてゼロに、マイナス5がマイナス3になる、そこを目指している」。小さき者、少数派への祈りのような視線がある。昨年のドラマ「初恋の悪魔」のせりふが印象深い。暴力や悲しみだらけの世界で、好きな人にこう語りかける。
『人にできることなんて耳かき1杯ぐらいのことなのかもしれないけど、いつか暴力や悲しみが消えたとき、そこにはね、僕の耳かき1杯も含まれているんだと思うんです。大事なことは、世の中は良くなってるって信じることだって』
何だか、このコラムの「マイナスにいる人がせめてゼロに、マイナス5がマイナス3に…」のところに心が留まりました。見えるもの、目立つもの、大勢を占めるものに人は目がいきがちです。私もそうです。しかし、少数を大事にする、一人を大事にする視点を絶対に忘れてはいけないと思ったからです。
そして、もう一つ。「人にできることは耳かき1杯ぐらい…」。一人の力は本当に小さいかもしれない。しかし、だからと言って諦めては前に進まない。小さな力が2つ3つ…と集まっていくことで少しずつ大きな力となっていく。だからこそ、信じ諦めず、粘り強く取り組んでいくことが大切だということ…。
「教育」に携わる私たちの仕事も、そんなことを忘れずに真摯に向き合うことが何より大切なのであることを改めて気づかせてくれたように思います。