【6月13日】雨後の虹のごとく…
- 公開日
- 2023/06/13
- 更新日
- 2023/06/13
校長のひとりごと
今月10日、パリで行われているテニス全仏オープン車いすの部男子シングルスで、小田凱人(おだときと)選手が史上最年少で優勝しました。それに関連することが、今朝の西日本新聞のコラム『春秋』に載っていました。
北九州の名産品「合馬たけのこ」は柔らかくてえぐみが少なく、高級食材としても知られる。そんな春の味覚を、梅雨のさなかに想起させる快挙だった。テニスの全仏オープン車いすの部男子シングルスを初制覇した小田凱人選手である。決勝で難敵を倒し、四大大会の史上最年少王者となった17歳は宣言した。「車いすテニスをもっと盛り上げ、さらに大きいスポーツにしていく」。日本で人気の高い野球やサッカーにも対抗心を燃やす。全ての四大大会とパラリンピックで優勝する「生涯ゴールデンスラム」を達成した国枝慎吾さんが今年1月に引退。小田選手は4月の飯塚国際車いすシングルスを最年少で制し、国枝さんから天皇杯を手渡された。エースのバトンの意味もあった。
野球とサッカーはもちろん柔道や体操、競泳など、五輪で金メダルを狙える競技には共通点がある。「雨後(うご)のたけのこ」のごとく現れる新しい力とエースの継承である。小田選手はサッカーに夢中の9歳で左股関節骨肉腫を発症し、車いす生活に。生涯を乗り越えて活躍する国枝さんに憧れてラケットを握ったが、病気をマイナスに考えることもあったという。
「障がいがなければできないスポーツ。何か頑張ることが一つできれば(病気が)武器に変わる」。
現地から病気と闘う少年少女へ送ったメッセージと笑顔は雨後の虹のよう。パラ競技に大きな一歩を刻んだ。
昨夜のニュースでは、優勝した後の記者会見の様子が映像で流れていました。流ちょうな英語で話されていました。実は小田選手、英語は世界で活躍していくには必要だと考え、独学で学んだとのことでした。それだけでもすごい!と私は感じました。また、このニュースのコメンテーターの松岡修造さんが、こんなことをコメントしていました。
「小田選手のテニスは『非常識なテニス』。普通、車いすテニスの世界では、サーブを受けるときはコートの後ろ側に下がって返球する。ラリー中もネット際に詰め、攻撃する選手はほぼいません。今までの車いすテニスの常識からすると、小田選手のこのようにサーブも前に詰めて返球したり、ネット際に果敢に詰めて攻撃したりするスタイルは、ある意味「非常識なテニス」なんです。しかし、今回優勝した小田選手のおかげで、今後は、このようなスタイルのテニスを目指す選手が出てきて、「非常識」が「常識」に変わるときがくるかもしれない」
小田選手は、プロサッカー選手になることを夢見て、小さい頃から本気でサッカーに向かい合っていたそうです。しかし、突然襲った病魔によって、不自由な生活を強いられ、痛みや絶望と闘いながら、車いすテニスを始めました。そして、映像で見た国枝慎吾さんの強さ・すごさに感動し、国枝さんに追いつきたい、追い越したいと努力をしたのです。
小田選手は、
「入院中に刺激を受けたのが国枝さんがプレーする車いすテニスで、それがモチベーションになって、リハビリも頑張れたし、すごく救われた感覚があった。何かを頑張ってみようという気持ちに車いすテニスに出会ってなったので、自分もそういう人になりたい」
と話されています。自分が頑張ることで、強くなることで、病気と闘う子どもたちの支えになりたいという高い志をもたれているのです。きっと小田選手の戦いぶりやメッセージに、勇気や元気をもらった子どもたちがたくさんいるはずです。
まだ若干17歳と思えないほどしっかりされていることに驚くとともに、とてつもない困難と絶望を乗り越えた方の強さとたくましさ、そしてそのしなやかさに感動を覚えます。今回の優勝で「世界ランキング1位」となった小田選手。これからのさらなる活躍が楽しみです。