【9月25日】倍返し
- 公開日
- 2023/09/25
- 更新日
- 2023/09/25
校長のひとりごと
西沢泰生さんという方の著書『明日をちょっぴりがんばれる48の物語』という本があります。その中の「頼まれたら、10倍返し!」というところを一部抜粋します。
知り合いの社長さんの言葉です。
「人から何かを頼まれたら、相手が『これくらいはやってくれるかな…』と思っていることの倍くらいを返して、相手の期待を良い意味で裏切り続ける。そうやって『頼まれたら倍返し』を続けていると、どんどん信頼されて、次々にイイ仕事がまわってくるようになるんだ」
この言葉を聞いて、「かわいいイラストの元祖」などと呼ばれるイラストレーター、田村セツコさんのエピソードを思い出しました。田村さんは1938年生まれ。1960年代から『りぼん』や『マーガレット』などの少女向け雑誌で、表紙や口絵などを描いて人気を博しました。その田村さん、さし絵の世界の大御所、松元かつぢ氏のツテで、ほとんど下積み時代を経験することなくイラストレーターとしてデビューをしました。しかし、本人曰く、「ラッキーだったのは、ここまで」。いくら大御所の紹介があっても、無名の新人にそう簡単にイイ仕事の依頼が入るはずがありません。まわってくるのは、ページのすき間を埋めるだけのいわゆる「捨てカット」の依頼です。当然のごとくお金も安くて、普通なら、少し落ち込んだり、ふてくされてしまうような仕事ばかりだったのです。ところが…。「カワイイ女の子の絵を描きたい!」と、雑誌の世界に飛び込んだ彼女にとっては、そんな「捨てカット」の依頼に対して、「わー、嬉しい!」とはりきって、10枚も描いて提出することもあったのです。「頼まれたら倍返し」どころか、「頼まれたら10倍返し」!
しかも。「どんな仕事も基本的に断らない」「必ず締め切りに間に合わせる」「できたイラストは自分で編集部に届ける」と、そんな仕事をずっと続けていました。そんな仕事ぶりは、徐々に編集部内で評判となり、「今度、ウチにも寄ってよ」と他の編集者から声をかけられることが増え、小さな仕事がどんどん入るようになっていったのだそうです。
田村さんは、こんなことを言っています。
「1の依頼に10で返す。締め切りと時間はきっちり守る。ニコニコ笑顔で、常に勉強を怠らない…。一つ一つはそんなに特別なことではないですよね?これは案外、どんなお仕事でも、商売繁盛(?)のコツかもしれませんね」…(後略)…
いかがでしょう。私たちもいろいろな仕事や頼み事をされることがあると思います。「気持ちよく引き受ける」「時間や期限を守る」「常に前向きに努力を続ける」「笑顔や気配りを大切にする」…。どんな仕事であったとしても、大切にしなければならないことだと思います。
「嫌だな〜」とか「めんどくさいな〜」と思いながら適当にしたり、そこそこの仕事をしたりするのか。それとも、「頼まれることがありがたい」「相手の方が少しでも喜ぶように…」と、少しでもいい仕事をして返そうとするのか…。その差は歴然としているように思います。
「10倍返し」「倍返し」まではできなくとも、少しでもいいものを、少しでも相手が喜ぶものを…と仕事や頼まれごとをすることは、相手からの信頼感も高まっていくのだと思います。きっと私たちもその経験が今までに幾度となくあったのではないかと思います。頼んだ人の仕事の丁寧さや几帳面さ、相手意識のある仕上がりなどを見て、「大事なことはまたこの人にお願いしたい…」と思うことがあります。自分自身も10倍返しまではいかないまでも、「どうせやるなら、少しでもいいものを…」と、これからも仕事をしたいと思います。