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【12月5日】学び続ける人

公開日
2023/12/05
更新日
2023/12/05

校長のひとりごと

 哲学者の岸見一郎さんという方がおられます。その方の著書『ゆっくり学ぶ』に「勉強しないのは劣等コンプレックス」と書かれているところがあります。

 勉強したくても時間がなくて挫折する人が多いという話を聞きます。本当は時間がないから勉強ができないのではありません。アドラー(オーストラリアの精神分析学者、心理学者)は「劣等コンプレックス」という言葉を使います。「AだからBできない」、あるいは「AでないからBできない」という論理を日常生活で多用するという意味です。
 このAは、Bできない原因ではなく、自分や周囲を納得させるための言い訳でしかありません。勉強ができないとか挫折してしまうという時に、「時間がない」ということを原因だと見なしているという意味であって、本当に時間がないから勉強ができないのではありません。
 アドラーは「見かけの因果律」という言い方もしています。本来、因果関係がないのに、因果関係があると見なすということです。時間がないことは勉強ができないことの原因にはなりません。限られた時間の中で勉強する人もいるからです。
 アドラーは厳しいことを言います。仕事や家事、子育てに追われて、勉強しようと思っても気力や体力が残っていないというようなことを言えば、たちまち、それは課題から逃れようとする神経症的な論理だと。
「はい、勉強しなければならないのはわかっています、でも」
「でも」と言った途端、勉強したい気持ちとしたくない気持ちが拮抗(きっこう)しているのではなく、勉強しないという決心を固めたということです。「でも」という言葉の後にあげられる理由は、すべて勉強しないための理由でしかありません。
 本当に勉強したいのであれば、あるいは、勉強が必要なのであれば、与えられた現実をどう使うかを考えるしかありません。

 私は、これを読んだとき、何だか自分自身を見透かされたような気がしてドキッとしました。できない理由を探す自分、できなかった言い訳をする自分、理由をつけて結局はやろうとしていない自分、できないことを自分勝手に納得させている自分…。
 一方で、どんなに忙しくても学びを止めない人、どんなにたいへんでもチャレンジを続ける人、常に向上心をもって取り組む人は世の中にたくさんいます。自分だけがたいへんなのではなく、自分よりもたいへんな人はたくさんいて、それでも努力している人がいる。
 岸見さんの言葉を読みながら、甘い自分を反省しました。できない言い訳ではなく、どうしたらできるかを考え、学び続けられるよう努力したいと思います。