【4月17日】料理は想いやり
- 公開日
- 2024/04/17
- 更新日
- 2024/04/17
校長のひとりごと
人間学を学ぶ月刊誌『知致』に以前テレビで放送されていた「料理の鉄人」という番組で「和の鉄人」としてその名をとどろかせた道場六三郎さんという方のインタビュー記事が載っていました。93歳の道場さんは、現在も銀座ろくさん邸主人として後輩達の指導にあたるなど活躍されています。そのインタビューの中の言葉をいくつか紹介します。
◆僕は何が一番辛いかと言ったら、お客様が嫌な思いをして帰ること。これはもう身を切られるくらいに辛い。飲食店なんていっぱいあるじゃないですか。それなのに、わざわざ選んで来ていただいたお客様の期待にやっぱり応えなきゃいけないし、お客様の喜ぶ顔を見ることが僕にとっての生きがい。だから、お客様には笑顔で精いっぱいのおもてなしをするんです。
◆(後輩達に日頃よく伝えていることは?)何をやるにしても、基本を身につけなければダメだっていうことは繰り返し伝えていますね。いつも見ていて気になるのは無駄な動きが多い。例えば、野菜をゆでる時にこれだけあれば充分足りるのに、何気なく必要以上の水を鍋に入れてしまう。何事にも適量がある。ちょっとした差でも水は損するし、ガスは損するし、時間も損する、もう隙だらけなの。
◆調理場のスタッフにも、うちの店はオープンキッチンですから、「常に見られている意識を持て」としょっちゅう言います。冷蔵庫の中はきれいに整理し、どこに何が入っているかを覚えて、開けたらすぐに欲しいものが取り出せるようにしておく。調理台が汚れたらサッと拭き、パッとたたんで置く。そういう些細な所作の機敏さや美しさが大事なんです。
◆自分から先に挨拶をするとか、ゴミが落ちているのを見つけたらすぐ拾うとか。こういったことは未だに気をつけて実行しています。僕はよく「小さな勇気」って言うんですけど、例えば洗い物でも特にいまの季節は水が冷たいし、洗うのが億劫(おっくう)になるじゃないですか。でも、ひとたび洗い出せば、なんてことはない。その洗い場に飛び込む最初の小さな勇気を心の中に起こせるかどうか。
◆仕事にも人生にも締め切りがあります。ですから、常に先を見通して時間を無駄にせず、一つ一つの仕事をスピード感を持って仕上げていくことが大事ですね。僕は毎年、「今年はこれをできるようになろう」と目標を決め、それを必ずノートに書いて日々努力してきました。目標もなくダラダラと働いたり、人から言われた仕事だけを嫌々やったり、そういう姿勢では伸びていきません。
道場さんは、修業時代のホテルの板長にひどいいじめを受けました。しかし、それでも「神様が与えてくれた試練だから逃げずに頑張ろう」と前向きに努力をし続け、板長も認めるまでになりました。三十代半ばで、信頼していた人に裏切られ多額の借金を背負わされることになっても諦めることなく料理人を続け、40歳のときに「ろくさん亭」を開店させました。
「料理は想いやり、人生も想いやり」をモットーに努力し続けてこられての成功があります。道場さんは、「基礎・基本を大切にすること」「挨拶や整理整頓などの日常の当たり前を徹底すること(凡事徹底)」「お客様を大切にすること(相手意識)」「常に努力を怠らないこと」「ますは一歩を踏み出すこと(小さな勇気)」を徹底してこられたことがよくわかりました。これらのことは、どんな仕事であっても大切なのではないかと私は思います。
ちなみに「料理の鉄人」、私はよくテレビで観ていました。そしてそのときに登場されていた道場六三郎さんの画面から伝わる人柄に惹かれていた一人でもあります。今回の記事を読みながら、道場さんの料理をいただきたくなりました…。