【11月26日】道具は使いよう
- 公開日
- 2024/11/26
- 更新日
- 2024/11/26
校長のひとりごと
11月25日付、西日本新聞のコラム『春秋』からです。
21世紀、新たに登場した画期的な道具といえばスマートフォンが筆頭だろう。NTTドコモのモバイル社会研究所がこの15年間の変化を調べたところ、2010年にスマホを使う人はわずか4%だったが、今や97%に達した。
スマホさえ持たなければ生じなかったあつれきや失敗を、老いも若きも体験し、スマホが犯罪の入り口となるニュースも絶えない。ネガティブに語られがちなスマホ社会だが、それは一面的な見方である。
4歳で視力を失った三宮麻由子さんは翻訳の職に就き、エッセイストとしても活躍してきた。全盲の1人暮らしには多くのバリアーが立ちはだかる。その日常を大きく変えたのが魔法の電脳板、スマホだった。カメラが文字を読み取り、目の前のものを見分けて、声で教えてくれる。食品パッケージに記された原材料や賞味期限が分かる。紙の質で当たりを付けていた郵便物の仕分けも簡単に。雨予報や鉄道情報は外出のハードルを下げてくれた。買い物は誰に頼まずとも、自分で欲しいものが買える。家族や友人に贈る品物を選ぶこともできる。誰かに何かをしてもらう立場から、してあげられる立場にもなれた。著書「わたしのeyePhone」には「掌(てのひら)の中の目」で尊厳を取り戻した、とつづった。
スマホが時間やお金を奪っていると感じる人もいれば、頼れる相棒であり、救世主だと思う人もいる。道具とは使いようである。
スマホは本当に便利です。連絡のツールとしてもそうだし、調べ物も簡単にできます。コラムにもあるように、買い物もネットで「ポチっと」すればできるし、お店に行っても現金やカードがなくてもスマホをかざすだけで手軽にできる時代です。最近は生成AIの登場でさらに様々なことが簡単にできるようになりました。ですから、誰にとっても本当に便利なスマホです。そして、三宮さんにとっては、スマホは「救世主」であり「尊厳を取り戻す」、本当に貴重なものであることがわかります。
一方で、大人の世界でもそうですが、中学校においても、スマホやSNSのトラブルが頻繁に起きます。学校では、授業や講演会などを通して、情報モラルやスマホとの向き合い方などについて学ぶ機会を設けています。また、保護者等への啓発も行っていますが、最終的には個人の自覚と責任によるところも大きく、難しい問題です。こんなにも便利なものと、どう付き合うか、どう上手に使いこなすかが大切なのだろうと思います。
スマホはどんどん進化し、多機能になっています。しかし、さらに進めばスマホを持たなくてもいい時代がくると言われています。たとえば、通信可能なディスプレイさえあれば、顔認証で様々なことができるようになるとか…。私たちの想像を超える早さで進化し続けています。
ただ…便利なものと上手に向き合うためにも、アナログな「心」の部分を大切にすることを忘れてはいけないと思います。