【1月17日】あれから30年
- 公開日
- 2025/01/17
- 更新日
- 2025/01/17
校長のひとりごと
6434人の命が奪われた阪神淡路大震災から、今日でちょうど30年が経ちます。神戸市中央区の東遊園地で開かれた「1.17のつどい」では、「よりそう 1.17」の形に並べた灯籠(とうろう)を前に、発生時刻に合わせて1分間黙禱(もくとう)が捧げられました。主催する1.17のつどい実行委員会によると、「よりそう」には、阪神・淡路大震災で気づかされたことは人に寄り添う大切さだとし、他の震災も含めて被災地を忘れず寄り添い続けようとの思いが込められているそうです。
今年、追悼式典には天皇陛下も出席され、犠牲者に深く哀悼の意を表し、世代や地域を越えて経験と教訓を繋ぐ取組が進められていることを心強く思うとしたうえで、「これからも、震災の経験と教訓を基に、皆が助け合いながら、安全で安心して暮らせる地域づくりが進められるとともに、そこで得られた知見が国の内外に広がり、次の世代へと引き継がれていくことを期待いたします」と述べられました。
遺族代表として兵庫県西宮市の武田眞理さん(66)が、実家が全壊し、当時67歳だった父親の穣さんを亡くした当時の状況を振り返り、「父はひとり犠牲になって家族を守り、それは私に強く生きろというメッセージに思えました」と。続けて、次のように述べられました。
「悲しいことばかりではありません。多くの方から支えていただき、あたたかいお心が大きな喜びとなり、前を向こうと思えた原動力になったことは忘れません。大切な家族を心の準備もなく失ってしまった私たちですが、心の中で故人はいつまでも生き続けています。悲しい記憶ではありますが、命の大切さを伝えていきたいと思っています」。
阪神淡路大震災では、6434人の命と共に、全半壊家屋約25万棟、10兆円を超える被害が出ました。多くの命を奪い、甚大な被害を出した震災ですが、以下のような「正の遺産」があります。
◆ボランティア元年…この震災をきっかけに災害ボランティアが定着。167万人のボランティアが復興の手助けをしたと言われています。
◆震度階級に「5弱」などを新設…0~7の8段階の体感による測定により震度情報の遅れや曖昧さが初期対応の遅れにつながったという反省から、震度5と6に「弱」「強」が加わり震度計を使った10段階になり、即時発表ができるようになりました。
◆東京消防庁にハイパーレスキューが創設…大規模災害に対応するため、高度な救出能力を有する隊員と装備を有する消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)が発足しました。
◆災害派遣医療チーム(DMAT)が発足…被災者に対する初期対応の遅れを露呈した震災。当時の医療技術でも「500名は救えたはず」と厚生労働省の日本DMATが発足し、要請に応じて活動しています。
◆カセットコンロ・ガスボンベの規格統一…メーカーによってガスボンベのサイズや構成部品が異なり不便が生じたため、1998年に形状が統一されました。
◆水道レバーが「下げ止め式」に…水道の湯水混合水栓のレバーは、震災前まではレバーを上げると止まる「上げ止め式」が普及していましたが、震災で物が落下して水道水が出っぱなしになるという事例が多発しました。そのため、震災後はレバーを下げれば水が止まる「下げ止め式」になりました。
◆地震保険が普及
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉があるように、時が経つとともに、事の重大さ、準備や備えの大切さがうすれていくことがあります。兵庫県内の復興再開発事業は昨年終了し、震災後に生まれた人が増え、記憶の風化が問題視されています。家族を震災で亡くされた方がこんなことを言われていました。
「どんなつらい思いをして今があるのかを伝えていかなければいけない」。
阪神淡路大震災のあとも、新潟県中越地震、福岡県西方沖地震、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震をはじめとする大地震、そして大雨による災害など、毎年のようにどこかで災害が起きています。昨日、私が受けた研修の中で東日本大震災を経験された東北大学の齋藤幸男先生がおっしゃっていました。「人間はバイアスに弱い」と。バイアスとは思い込み、先入観、偏見のことです。ここでは、「私の家は大丈夫だろう」「私にはそんなことは起きないだろう…」「(以前の経験から)ここなら大丈夫だろう」というような勝手な思い込みのことです。いつどこで起きてもおかしくない、私にも起こりうる。そして、「未曾有」でなく、自然は私たちの想像をいつでも超えてくる…そう思って準備や備えをすることが本当の防災・減災に繋がることを教えていただきました。
今日という節目に、改めて「命の大切さ」「当たり前のありがたさ」そして、「防災・減災の重要性」について、真剣に考えることが大切なのだと思います。
最後に…阪神淡路大震災で亡くなられた方々に追悼の意を表すとともに、ご遺族並びに被災地の皆さんのご健康を心より願います。