【6月5日】マナー
- 公開日
- 2024/06/05
- 更新日
- 2024/06/05
校長のひとりごと
昨日の讀賣新聞のコラム『編集手帳』に次のことが載っていました。
夏樹静子さんにも戸惑いはあったのではないか。代表作『Wの悲劇』は米国で改題のうえ出版された。『マーダー・アット・マウントフジ』(富士山麓殺人事件)。犯行現場の山中湖から富士山が見えるものの、それだけのことで物語には関係しない。なにもそこまで富士をおもしろがらなくとも…と『Wの悲劇』の悲劇にも似た感想を抱いてしまう。
山梨県富士河口湖町で、コンビニエンスストアの屋根に乗る富士の眺望が外国人観光客に人気となった。混雑の危険から、町は「目隠し」に黒い幕を張り景色が見えないようにした。
外国の人々から見た富士といえば、フランスの中日大使でもあった詩人ポール・クローデルの詩が思い浮かぶ。
<富士/神の王座のごと/はかりしれぬ高さで/雲の海にはこばれて/われらの方へと進みくる>。
麓(ふもと)の町まで行けば、どの方角であろうと出会える美の圧倒感だろう。富士の鑑賞の仕方は…などと説教めいたことを書きたくなるが、SNS時代にあって「コンビニ富士」の誘客力は認めねばならない。観光資源がブームに左右され、環境と調和できないことが悲劇だろう。
コロナが5類となり行動制限もなくなってからというもの、全国各地に観光客が押し寄せ、そこに暮らしている日常にまで様々な悪影響を及ぼすような「オーバーツーリズム」なる問題が起きています。上記に載せた「コンビニ富士」のことも以前から話題になっていました。コンビニの上に富士山が乗っているような写真が撮れるとSNSで話題となり、撮影のために交通量が多いコンビニ前の道路を横断する危険な行為や、周辺の私有地に無断で入る迷惑行為などが後を絶たない状況になっていました。向かいにある歯科医院も以前は患者さんに迷惑がかからなければと、敷地内での撮影を許容していたのですが、タクシーや大型バスまでとまるようになり、通院できないことが起きてきたそうです。さらには、ゴミの放置や喫煙、駐車場での食事などの迷惑行為が相次ぎ、注意しても罵声を浴びせられたりたばこを捨てられたりしたとのこと。この歯科医院を含む住民の方々が町に要望し、今回の措置になりました。ところが、幕を張ってもそれに複数の穴が開けられていることもわかり、さらに強度の高い幕に張り替えるなどの検討もされているようです。ただ、それが最善の策なのか、「いたちごっこ」になるのでは?との懸念をしている住民の方もおられます。
たくさんの観光客による利益や利点ももちろんあります。しかし、そこに住む方々が通常の生活を送れないとか、ゴミの散乱や迷惑行為が横行するような状況ではいけません。現在、「オーバーツーリズム」に対して、様々な対応策が出てきています。例えば、「観光客の一点集中を防ぐために、開館時間やイベントの開催を早朝や夜間にしたり、混雑情報を可視化したりする」「観光地の収容力に応じて、入場料や税金を課したり、予約制や入場制限を導入したりする」「観光客に地域の文化や習慣、ルールを理解してもらうために、ガイドや看板、SNSなどを活用して情報提供や注意喚起を行う」などの取組も進められています。だからといって、簡単に解決するような問題ではありませんし、絶対的に解決する手立てはないかもしれません。ですから、「コンビニ富士」の件も、幕を張ればすべて解決することではないかもしれません。最終的には、そこに訪れる人のマナー、私たちすべての人の心がけや相手意識が大事ではないかと思います。みんなで考えていくべき課題ですね。