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【6月13日】投げる哲学者

公開日
2024/06/13
更新日
2024/06/13

校長のひとりごと

 今朝の西日本新聞のコラム『春秋』に、現在米大リーグで活躍中の今永昇太選手のことが載っていました。

 福岡県で難しい読み方の地名に「えいのまる」がある。北九州市八幡西区の住宅街で、かつて洞海湾の入り江だった地に「永犬丸」という船が行き来していたことが由来とされている。今季加入した米大リーグのカブスで既に6勝を挙げている今永昇太選手は、永犬丸中の軟式野球部で控え投手だった。甲子園出場がない県立の北筑高でもエースになったのは2年秋だった。
 野球部長として指導した田中修治さん(59)=現小倉商高監督=が振り返る。「彼の良さは、うまくなりたいという情熱を持ち続けられる気持ちの強さ」。入学時は身長165センチ。体重も60キロに満たない細身の球児は、学ぶことに貪欲だった。他校の注目投手を参考に腕のしなりや重心移動を研究。自分に合わなければ違う方法を考える。書きためた大学ノートは4冊。野球の本場でいきなり旋風を起こした「投げる哲学者」の原点は高校時代にあった。最後の夏は福岡大会4回戦で伝統校の小倉高に惜敗。140キロ台の速球で押し、9回を2失点で完投した。涙はなかった。「力は出し切った。人間も技術も磨いて将来はプロに入りたい」との談話が残る。
 甲子園出場を懸けた福岡大会の組み合わせが、14日に決まる。チームの目標はそれぞれでも、情熱を胸に抱き白球と向き合った日々に意味がある。洋々たる未来へ「出航」した左腕は30歳の今、太平洋の向こうで夢を切り開いている。

 今永投手は、6月12日現在メジャーで6勝を挙げ、防御率もまだ1.96という素晴らしい成績です。5月途中までは防御率0点台と驚異の数字を残していました。
 今永投手の使用するグローブには、北筑高校野球部の当時の井上監督の言葉「逆境こそ覚醒のとき」が刺繍されているそうです。これは今永投手が高校2年の夏、福岡大会で先発したものの大敗し、先輩たちに対する申し訳ない思いで落ち込み、逆境を味わった時、監督が送った言葉ということです。コラムの中にあるように、今永選手はうまくなりたいという情熱を持ち続け、高校時代から自分を客観的に分析し、今の自分に足りないものや、やるべきことが明確に理解できていたと井上元監督もおっしゃっていたそうです。そして、取材やインタビューで放つ今永選手の言葉が独特のものであったこともあり、「投げる哲学者」と呼ばれるようになったようです。
 今永選手が発した言葉のいくつかを紹介します。
◆「援護がないという言い訳は防御率0点台の投手だけが言える」(2016年4月14日、5回途中3失点で敗戦投手に)
◆「今日は広島ではなく過去の自分に勝った」(2016年5月6日プロ初勝利時)
◆「マウンドにいるのは、偽りの自分なのかもしれない」(2019年8月25日にキャリアハイとなるシーズン12勝目を挙げた際の発言)
◆「私自身、緊迫した試合展開でもあったので、ノーヒットノーランという記録よりは、まずは勝ちたいという気持ちが自分自身を無にしてくれたのではないかと思います」(2022年6月7日ノーヒットノーラン達成時)

 味方がなかなか点をとってくれなかったとしても、決してチームメイトのせいにせず、自分がどうだったのかというように、自分に指を向け振り返っていることがわかります。そうやって、自分自身を客観的に分析し、理解し、努力し続けてきたからこそ、今があるのだと思います。そしてもちろん、技術や体力だけでなく、何より心を鍛え人間力を高めてきたのだろうと思います。そんな今永選手をこれからも応援したいと思います。