最近の記事はこちらメニュー

最近の記事はこちら

【7月17日】池江選手に学ぶ

公開日
2024/07/17
更新日
2024/07/17

校長のひとりごと

 一昨日、テレビで水泳選手の池江璃花子選手のことが特集されていました。池江選手と言えば2019年には100mバタフライで、世界ランキング1位になり、さらなる活躍が期待されていた選手です。ところがそんな矢先、突然の「白血病」の診断。40度の高熱、苦しい治療と過酷なリハビリ、10ヶ月もの入院。それにも関わらず、わずか2年あまりで復活し、2021年4月の日本選手権で見事優勝するという快挙を成し遂げられました。そのときのインタビューでは、
「まさか、100メートル(バタフライ)で優勝できると思っていなかったですし、5年前のオリンピック選考会よりも、ずっと自信もなかったし、自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていたんですけど。勝つための練習もしっかりやってきましたし、最後は『ただいま』っていう気持ちでこのレースに入場してきたので、自分がすごくつらくてしんどくても、努力は必ず報われるんだなんていうふうに思いました」
 と答えていました。報道では「奇跡的な復活」の文字がたくさん並んでいました。もちろん、専門家である医師も、「白血病の治療は合併症との闘い。まずは普通の生活を送れるようになるかというところ。それが、競技生活を送れるようになるなんて並大抵のことではない」と言っていました。
 そんな池江選手、2023年3月のインタビューではこう答えています。
「以前は、常に自分は前に進めると言い続けたけど、今は前向きではない。周りの人は東京オリンピックに出場しただけでも凄いと言ってくれるけど、本当に自分はそれでいいのだろうか」
 2022年の日本選手権では4位、ベストタイムからは2秒も遅い。しかも、体力が十分に回復していない東京オリンピックのときのタイムより遅い。そんな池江選手は、試合になると泳ぎたくないという気持ちになったそうです。そして、「こんなに自分って弱いんだ。病気しているときのほうが強かった…」と。
 池江選手はそのあとこう語っていました。
「東京オリンピックでは、リレー3種目に出場。白血病からの復活が順調すぎて、その後の不調があまりにも精神的に応えました。高校生のときは、すごく上を見ていました。病気のときも、きっと復活できると自分を慰め、前を向いていました。でも2023年頃は、自分ってあまり頑張れてないのでは?と思うようになってきた。そして、そう思う自分がわからない。わからない自分がわからない…そんな気持ちになっていました」。
 そこで、池江選手は自分を変えるために練習環境を変えることにしました。選んだのがオーストラリアで以前お世話になったマイケル・ボールコーチに指導してもらうことでした。他の有名選手と一緒に、世界基準の厳しいトレーニングを続けました。その中で、池江選手の気持ちに変化が起こります。
「世界トップスイマーたちとの練習。誰もが当たり前に朝早くから練習に来て、午後練習してすぐに夜が来て、また朝から練習する。そんな周りの選手達にも刺激を受けながら毎日毎日練習しながら自分の気持ちが変わっていきました…」。
 そして迎えた今年の日本選手権。見事100mバタフライで2位、標準記録も突破し、個人種目での出場を決めました。その後の番組のインタビューで、池江選手はこう話していました。
「こんなにきついこと、苦しいことは覚悟がないとできない。2028年を区切りに頑張る覚悟です。そして終わるときに、(今までのことが)ひとつも無駄でなかったと思えるような結果を出していきたい」。

 常に上を目指し、白血病となってもあきらめず、常に前向きで頑張ってきた池江選手が、落ち込み、自分自身に疑問をもち前向きになれていない時期があったことを私は一昨日の番組を見て、初めて知りました。それでも、練習環境を変え、自分自身の気持ちを変えていった池江選手は、やはり凄い選手だと思いました。池江選手の姿や言葉、生き方から、たくさんのことを学ぶことができます。
 池江選手、パリオリンピックへ向けてこんなことを言っています。
「自分を超えられるのは自分しかいないので、そこを信じていきたい。もっともっと上にいきたい」
 きっと新たな「池江璃花子」として、パリでも輝いてくれるものと期待しています。