【2月12日】不断の努力
- 公開日
- 2025/02/12
- 更新日
- 2025/02/12
校長のひとりごと
『人間学を学ぶ月刊誌 致知』に、パリ2024オリンピック男子柔道81kg級の金メダリストである永瀬貴規さんのインタビューが載っていました。
男子81kg級は、世界の強豪がひしめき、日本選手がなかなか勝てない最難関の階級でした。柔道界では“鬼門”と呼ばれています。そんな難しい階級で、東京五輪、パリ五輪で2連覇を果たしたのが永瀬さんです。永瀬さんは尊敬する大叔父さんが道場を開いていたことが柔道を始めたきっかけだと話されています。自分より大きな選手を投げたときの気持ちよさから柔道が好きになりのめり込んでいきました。そんな永瀬さんは、「見て学ぶ、真似て覚える」と、練習を積み強くなっていきます。中学でもある程度、結果を残した永瀬さんは、長崎日大高校の松本監督に「日本一を目指そう」と誘われ進学します。そこで、「考える柔道」を教えてもらいます。高校1年生で、早々に日本一になった永瀬さんが特に意識していたことを次のように話されています。
「負けを負けのままにしない、ということですね。私のことを常に勝ち続けてきた選手と思う方もいらっしゃいますが、そうではないんです。勝っては負けを繰り返し、心に不安要素を抱える中から学んできました。しかし一番大事なのはその負けや不安を放置しないことです。練習で打ち消す。いずれ『この負けがあったからこそ勝てた』と言えるように、負けから必ず教訓を得て、勝利に繋げてきました。人は1日にして強くならないと私は自分に言い聞かせてきました。1週間でも1か月でも、日々、本当の積み重ねをした人が強くなる。これは自分のモットーですね」
筑波大学に進み、2年生主将として団体優勝、その2か月後、初めての国際大会に出場し、優勝します。そして、社会人1年目の22歳のとき出場したリオデジャネイロ五輪では銅メダルという結果。「次のオリンピックでは絶対に金メダル!」と思っていたところが右足に大けがをします。練習ができず不安でいっぱいのとき、次のような気持ちで乗り越えたそうです。
「不自由なく柔道ができていた自分と現実の自分を比べるのではなく、昨日と比べて今日何ができるようになったか、“できること”を見つけよう。今日の自分より明日の自分に懸ける。そう前向きな考えに切り替えたんです。できる動き、リハビリをしながら『1週間前は1人で歩けもしなかったけど、いまは少し歩けるな』『走れるようになった』と考える。そうしたら成長できている実感が出てきて、状況をポジティブに捉えられるようになりました。手術して実践に復帰するまで1年弱かかりましたけど、以来ずっとこの考えを大事にしています」。
そうして迎えた東京五輪で、持ち味の“強い気持ち”で金メダルを獲得します。しかし、その後は、なかなか勝てない苦しい日々。そこで、恩師の先生やコーチなどにも頼りながら、自分の柔道の“原点”に返ることを心がけ、パリ五輪で2連覇を果たします。歓喜の瞬間も表情を崩さず、相手に礼を尽くす姿が話題となっていた永瀬さん。最後にこんなことを話されています。
「柔道の強さだけでなく、立ち居振る舞いも見習いたいと、皆様に言われ応援されたい。…人は決して1日では強くなりませんし、勝利は1日にして成りません。『日々精進』。私はこの言葉を大事にしています。地道な努力の継続こそが心身を鍛え、勝利への道を開いてくれる」。
永瀬さんの高い志と、負けや失敗をしっかりと振り返り、じっくりと“考える”姿勢。その学びから生まれる不断の努力こそが、オリンピック2連覇の偉業に繋がっているのだと改めて思います。