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【3月19日】真理

公開日
2025/03/19
更新日
2025/03/19

校長のひとりごと

 今朝の西日本新聞のコラム『春秋』からです。


 ジャイアントキリングとは、スポーツで格下の者が予想を覆して強敵を倒すことを意味する。金星(きんぼし)や番狂わせはいつも観衆を熱くさせる。

 昨夏、1館で封切られた時代劇映画「侍タイムスリッパー」が日本アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれた。大手映画会社の大作を押しのけての快挙である。口コミやSNSで評判が広まり大ヒット。多くの賞を取り九州各地でもまだ上映が続く。

 映画は幕末の会津藩士が現代にタイムスリップして、時代劇の斬られ役として活躍するコメディー。京都で映像制作の仕事と米作りを兼業する安田淳一監督が自主制作した。預金をつぎ込み愛車も売った。脚本の面白さに東映京都撮影所が協力した。完成時、監督の預金残高はわずか7千円だった。ここまで自腹を切る熱意に感服する。

 時代劇の現状は厳しい。京都文化財団は2年前、時代劇の技術継承について調べた。小道具、床山、殺陣師。制作本数が減り技を引き継げず、酒だるや和船を修理できる人も足りない。「日本人の郷愁という美学が息づく時代劇」の技を、文化財として伝える体制が必要だと報告した。

 安田監督は、時代劇への愛にあふれた作品をある俳優にささげた。出演がかなわず他界した、斬られ役一筋の福本清三さん。主人公の人柄にもその人生を投影させた。

「頑張っていれば、誰かがどこかで見ていてくれるから」。

いつも励ましてくれる恩人だった。


 昨年9月、真田広之さん主演のハリウッドドラマ「SHOGUN 将軍」が作品賞を含む18部門で受賞しました。今回の日本アカデミー賞では、都内でわずか1館の公開から口コミで人気が広がり、300館以上に拡大され興行収入も10億円を超える大ヒットの「侍タイムスリッパー」。10数人のスタッフで製作したインディーズ映画が日本映画の頂点を極めたことに、安田監督は声を詰まらせながらこう語られたそうです。

「驚いています。映画人の心意気と矜持(きょうじ)、応援してくれたお客さんに心から感謝します。そして、何事も諦めずにやり切ることを教えてくれた亡き父、誰かが見ていてくれると言ってくださった福本清三さんに伝えたい」。


 真田広之さんも安田淳一さんも、これまで時代劇を支えた方々への感謝や敬意が溢れています。そして今回私が一番心に残った言葉が、

「頑張っていれば、誰かがどこかで見ていてくれるから」

 です。自分では精一杯頑張っても頑張ってもなかなか評価されない、日の目を見ないことも多々あります。しかし、信念をもって、志をもって頑張り続けることで、ある人の目にとまったり、周りから認められたり、何かのきっかけで大きな評価を受けることもあります。そのためにも、諦めずにやり続けることが改めて大切なのだと思います。どんなに小さなことでも、他人から見たら一見つまらないと思うようなことであったとしても、粘り強く続けることが大きな力となっていくのだと思います。

 

 最後に…「侍タイムスリッパー」主演の山口馬木也さんは今回が映画初主演だそうです。俳優さんの中でも卓越した殺陣の腕を持つといわれる山口さんのことが、ヤフーニュースに「主演の山口馬木也の生きざまが示す“本物の重み”」というタイトルで載っていました。その記事の中に、取材した記者さんのこんなコメントが載っていました。

「やればできる。これはある意味残酷な言葉だと思います。やっても結果が出ない人もいる。やったところで必ず結果が出るというものではありません。ただ、26年芸能取材をする中で痛感するのは、成功している人で『やらずに』成功した人は一人もいないということです。努力が報われるかどうかは分かりませんが、努力せずに成功した人は一人もいない。これは真理です…