【4月10日】いいね!
- 公開日
- 2025/04/10
- 更新日
- 2025/04/10
校長のひとりごと
エッセイストで、株式会社おいしい健康取締役などをされている松浦弥太郎さん著『伝わる力』の「僕の“いいね”」からです。
春になると、仕事のことで悩んだり、迷ったりする人は多いと思う。思うままにならないことばかりだし、人間関係も大変だ。ほんとに。
自分はなんのために仕事をするのかと僕もたくさん考えてきた。
生活のためというのは当たり前かもしれないけれど、それだけかというと違うようにも思うし、ちょっと寂しい気もする。では自分にとって他に何があるのか。よし、仕事をしようと奮い立たせるものはなんだろうと。
そこで向き合うのは、自分の「いいね」かな。言葉の通り、最も「いいね」があると思うもの。美しいと感じるもの、しあわせと思うもの、大切なもの、それにならいのちをかけたいと思うもの。人それぞれあると思う。いろいろと。そんなことを胸に手をあててよく考えてみる。僕はよく寝る前に考える。毎度そのまま眠ってしまうけれど、毎日そうしている。気分や感覚は毎日変わるから、こう思ったり、ああ思ったりと、なかなか定まらない。でも、そのうち、なんとなくだけど見えてくる。
僕の「いいね」は、この社会が人に愛される人でいっぱいになることです。そうして、みんながしあわせになるといいなあと心から思う。そのために仕事を頑張るっていうのも、僕の「いいね」です。
人は人を愛することによって、ほんとうの意味で自分を愛することができる。どんな仕事であってもその先には必ず人がいる。その人が、人に愛される人になるために、自分に何ができるのか。そのための仕事は「いいね」だなあ。
3月4月は、毎年のことですが、バタバタします。何度経験しても先生方との別れと出会いもありますし、子どもたちも卒業や進級、入学などという大切な節目でもあります。そんな中、忙しすぎるのかいろいろと緊張したり考えたりしてるのか、身体だけでなく心まで少し疲れていることもあります。そんなとき、子どもたちがいきいきと活動する様子を見たり、子どもたちが笑顔で挨拶したり話しかけたりしてくれるだけで元気が湧いてきます。
37年前、大学を出てすぐに新任教師となって赴任した学校は、私の想像をはるかに超えるほど“荒れ”ていました。身の危険を感じるほどのことが頻繁に起き、授業を落ち着いてすることもままならない状況でした。1年生の担任だった私は、自分の学級もうまくいかず、毎日悩んでばかりでした。毎晩遅くまでの指導や地域巡回、家庭訪問などが続きました。それが終わって学校に戻り、当時一緒に赴任した先生と悩みを共有したり、励まし合ったりしてなんとかその日を乗り越えていました。しかし、次から次に起きる事件や問題…自分の力不足で、悲しい思いをする子もいて、申し訳なく思うのと同時に、自分が情けなくなりました。先を見通すことがまったくできなかった私は、「もう辞めよう…」と、何度も思いました。その当時の私は、教室でもきっと苦しい顔をしていたのでしょう。つらい顔をしていたのでしょう。子どもたちが生活ノートのコメント欄にこんなことを書いてきたのです。
「先生、最近疲れていませんか?無理しちゃダメですよ。先生は私たちの大切な担任の先生なんですから」
「先生、僕はいつでも先生の味方です。僕にできることは何でもしますから言ってくださいね」
…
子どもたちのあまりの優しさに涙が止まりませんでした。何て優しい子どもたちなのだろう。優しくてけなげで素晴らしい子どもたちを見捨てて「辞めたい」なんて考えている自分が本当に情けなくなりました。こんな素敵な子どもたちのことを私はちゃんと見ていなかったのです。この子どもたちのためにも、もっともっと頑張らなきゃって私は思いました。自分が逃げちゃダメだって思いました。わずか12歳、13歳の子どもたちに励まされている自分…、もっとしっかりしろ!大したことはもちろんできなくともこの子たちのことをもっと愛して、この子たちがもっと笑顔になれるように、あたたかいクラスになるように…自分、頑張れ!そう思ったのです。それが私がここまで教師を続けてこられた原点です。
子どもたちの感性は本当に素晴らしい。子どもたちの成長は凄い。子どもたちにどれだけ勇気をもらい、元気をもらい、感動をもらい、心をあたたかくしてもらったことか。かけがえのない子どもたちがたくさんの人から愛され、笑顔で過ごせるように、幸せになれるよう、私は自分ができることをする。それが私の「いいね」です。