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【7月3日】ダンゴムシ

公開日
2025/07/03
更新日
2025/07/03

校長のひとりごと

 今朝の読売新聞のコラム『編集手帳』からです。


 俳人の中原道夫さんにダンゴムシを描写した句がある。〈團子蟲(だんごむし)空見たことか動き出す〉(『橋』書肆アルス)。テーマは童心に立ち返ることだろうか。

 クワガタのように遠くにさがしにいかなくても、土のある所ならどこにでもいたのを思い出す。体長1センチほど。つつくと丸まり、そのままかと思えば突然、体を伸ばして動き出す。〈空見たことか〉は掛け言葉だろう。子どもに好かれるこの虫が防災の教材となる。NPO法人「減災教育普及協会」(横浜市)が提供するプログラムに、「ダンゴムシポーズ」が出てくる。地震が来て、頭をかかえてうずくまるダンゴムシのポーズになると体が揺れて転がる。床に手をつくカエルポーズの方が安定し、周囲を見渡すことができる…と同協会は教えている。いざその時が来て身近な生き物を思い出し、行動を決める子が育っているということだろう。

 南海トラフ地震の死者(想定29万8000人)を8割減らす政府方針がまとまった。津波の避難施設の整備などを急ぐ。インフラも大事だが、いざその時にどう動くか。心に何かを備えておくことが大前提だろう。


 今後30年以内に80%程度の確率で起きるとされている南海トラフ巨大地震。政府は今年3月、およそ10年ぶりに被害想定を見直し、最悪の場合、死者数が約29万8000人、全壊・焼失する建物が約235万棟、災害関連死が約2万6000人~5万2000人、避難者数1230万人、経済被害270兆3000億円などとしています。コラムにもあるように、新たな防災計画では、最大29万8000人と想定する死者数について、今後10年で「概ね8割減少」すること、また235万棟と想定する全壊・全焼建物数も「概ね5割減少」とする減災目標を掲げています。さらに、揺れや津波対策など具体的な目標を205個設け、特に、住宅の耐震化や感震ブレーカーの普及といった命を守る対策と、避難所の生活環境の向上など命をつなぐ対策を重点的に推進するとしています。


 一方、鹿児島県・トカラ列島近海で6月21日以降、地震が続いています。専門家の話では、南海トラフ地震への影響についてはないとのことですが、鹿児島県十島村などで観測された震度1以上の地震は900回以上とのこと。昨日午後4時現在、震度5弱は3回、震度4は18回、震度3は60回発生。この海域では2021年、2023年にも群発地震は起きていますが、数日で収束しています。しかし今回は10日以上にわたり増え続けており、観測史上最多となっています。収束時期はわからず、気象庁は「すぐに避難できるよう準備してほしい」と呼びかけています。そうはいっても、簡単に避難なんて…とも思います。住民の方々の不安はいかばかりかとお察しいたします。早く収まるよう祈るばかりです。

 「地震大国 日本」。いつどこで起きてもおかしくない状況です。福岡だってそうです。すべてを防ぐことは無理でも、少しでもできる事前の物的・人的、そして心の「準備」や「備え」がやはり大事なのだと思います。


(ひとりごと 第1051号)