【7月4日】復元力
- 公開日
- 2025/07/04
- 更新日
- 2025/07/04
校長のひとりごと
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昨日から3年生家庭科の授業で「子育てサロン」が行われています(写真)。
子育てサロンはの目的は、以下の3点です。
◆乳幼児とのふれあい体験を通して、かかわる楽しさや難しさを知るとともに、安全に配慮して乳幼児と関わる技能の基礎を身につけさせる。
◆乳幼児を育てる親ともふれあうことを通して、家族の絆や親の思いに気づかせる。
◆コミュニティ・スクールとして、地域の方をGT(ゲストティーチャー)に迎え、中学生の保育実習を行うとともに、子育て中のお母さんが地域で交流する場を設ける。
地域から多くの方にご支援いただき、3年生の子どもたちにとって、本当に有意義な時間となっています。何より、乳幼児と関わる子どもたちの表情が素敵でした。改めて、子育ての楽しさや大変さ、親の思い、家族の絆、命の素晴らしさなど、たくさんのことを学ぶ時間になっていると思います。
さて、清水克彦さんの著書『知って得するすごい法則77』の「ドレイゼンの復元力の法則」からです。
「人は失敗や挫折を経験しても、その経験から学ぶことで、前よりも強く、より復元力のある人間になれる」
1960年代にイギリスの心理学者、ジョン・ドレイゼンによって提唱された「ドレイゼンの復元力の法則」を紹介します。
筆者が教育問題を取材する中で感じてきたのは、「カーリング育児」が増えてきたという思いです。ご存じのように、カーリングは、投げたストーンが氷の上をスムーズに進むよう「先回り」し、ブラシでゴシゴシとリンク表面をこするスポーツです。それと同じように、子どもが失敗しないよう、道を外れないよう、先に先に手を打とうとする過干渉の保護者が多すぎるというのが正直な感想です。
「ドレイゼンの復元力の法則」は、もとはと言えば、「おかしくなった状況を復元するための時間は、おかしくなるまでの時間に反比例する」という法則ですが、ドレイゼンは、動物実験を通じ、「失敗した動物は試行錯誤を繰り返し、失敗や挫折を回避する方法を習得し、成功する方法を学ぶ」という結果も示しています。
この結果は、ビジネスやスポーツ、子育てなどさまざまな分野で応用されています。子育てで言えば、子どもにはどんどん失敗させ、焦らず時間をかけて「成功した」という実体験を味わわせるのと同時に、タフな精神力を養うことが重要です。そのためには、保護者は「カーリング育児」になっていないかチェックし、子どもが失敗しないよう「先回り」する管理型子育てから、失敗から立ち上がろうとしている子どもをサポートする支援型子育てに転換すべきです。…(後略)…
親にとって子どもは「宝」です。ですから、「失敗してほしくない」と思う感情はよくわかります。ただそれが行きすぎて、親がすべて先回りして子どもがするべきことまでしてしまうようなことはよくないということです。その“あんばい”は難しいですが…。
「復元力」は英語では「レジリエンス」といいます。近年よく出てくるようになった言葉です。心理学用語では回復力、適応力の意味合いで、ビジネス分野では、困難に直面してもしなやかに立ち回り成長につなげていく力ともいわれます。未来の予測が困難で変化の激しい現在、子どもたちに身につけてほしい力として、「粘り強さ」や「レジリエンス」があると思います。それこそ、目標をもち、その達成に向けて努力し、チャレンジしていくこと。その中でたくさんの失敗もありますが、その失敗を学びや糧にして成長していくことが大切なのだと思います。その過程の中で、親を含め私たち大人がどのような声かけをしたり、適切なサポートをしたりするかが重要なのでしょう。
無限の可能性をもった子どもたちが、未来に向かって自分の人生を切り拓き、たくましく生きていけるよう、私たち大人も子どもたちとしっかりと向き合い、共に成長していけるようにしたいものです。
(ひとりごと 第1052号)