【7月6日】次の世代へ
- 公開日
- 2021/07/06
- 更新日
- 2021/07/06
Kのつぶやき
今日の西日本新聞の「春秋」からです。
きょうはジャズの神様ルイ・アームストロングの没後50年。米南部の裏町に生まれた黒人の少年は非行を繰り返し、矯正施設に送られた。そこで出会ったコルネット(トランペットに似た楽器)が人生を変えた。施設のブラスバンドで才能が花開き、音楽の道へ。ジャズの隆盛期を迎えていたニューヨークで活躍し、天才的な演奏と情感あふれる独特の歌声で世界的スターとなった。人種差別が公然と行われる時代だった。公演先のホテルも劇場の入り口も白人とは別。彼の歌が心を揺さぶるのは、不遇な生い立ちや理不尽な差別に対する怒りや悲しみ、弱い者への優しさなどが伝わってくるからか。代表曲「この素晴らしき世界」はベトナム戦争のさなかに発表された。木々の緑、赤いバラ、青い空、白い雲、友と交わすあいさつ、赤ちゃんの泣き声・・・。平和な暮らし、ありふれたものが当たり前にあることが<なんて素晴らしい世界なんだ>と。「当たり前」が失われたとき、かけがえのないものだったと人は知る。新型コロナ禍で変容した世界で途方に暮れる私たちの姿だ。熱海で大規模な土石流災害が起きた。1年前の熊本豪雨、4年前の九州豪雨を思う。自然は無慈悲に日常を奪う。<赤ちゃんの成長を見守ろう>と彼は歌う。過酷な現実にあらがい、「当たり前」を希望とともに次の世代に伝えたい。「なんて素晴らしい世界だ」と感じられるように。
ルイ・アームストロングさんの「この素晴らしき世界 (What a Wonderful World)」は、車、保険会社、証券会社、携帯電話会社など、多数の企業のCMソングとして使用されているので、曲を聴けばほとんどの方が、「あー知ってる」ということになると思います。彼の声は「だみ声(がらがら声)」で特徴的です。とても豊かで味のある声は、安心感があり引き込まれます。さらに、ユーモアがあり人間性豊かな彼について、ある資料には次のように書かれています。
ルイ・アームストロングは20世紀に活躍したジャズ・トランぺッターでありボーカリストです。あだ名は「サッチモ」。「ジャズの父」とも呼ばれた彼は、「スキャット」と呼ばれる歌唱法を生み出し、その後のジャズ界をけん引しました。多くのミュージシャンたちがルイ・アームストロングから影響を受けたと語り、彼なしには現在のジャズの姿はなかったかもしれません。
彼の持つ明るく華やかな雰囲気と深い味わいの歌は多くの人々を癒しました。ベトナム戦争の最中だった陸軍基地を訪れ、若い兵士たちの前で慰問演奏した映像なども残されています。またステージでのエンターテイメント性が評価されて映画にも多数出演しました。1949年にはアメリカの国民的ニュース雑誌「タイム」で、ジャズ・ミュージシャンとして初めて表紙を飾っています。1964年に発売された「ハロー・ドーリー」は、3ヶ月連続で首位を独占していたビートルズを破り全米1位を獲得しています。
そんな偉大な彼は、1971年7月6日に69歳の生涯をとげました。葬儀には、政治家や著名なミュージシャンたちなど多くの人々が参列したそうです。彼は次のような言葉を残しています。
『途中で諦めちゃいけない。途中で諦めてしまったら、得るものより失うもののほうが、ずっと多くなってしまう』
自然災害、新型コロナウイルス感染症・・・私たちは様々な困難に直面していますが、決して諦めることなく、次の世代に素敵な「日常」を繋いでいけるように、一人一人が前を向き努力をしていく必要があるのだと思います。ルイ・アームストロングさんが日常の「当たり前」を、「なんて素晴らしい世界だろう」と感じたような素敵な「感性」をもって・・・。