【11月15日】雲外蒼天
- 公開日
- 2021/11/15
- 更新日
- 2021/11/15
Kのつぶやき
11月12日・13日に行われた将棋の「竜王戦」第4局で、19歳の藤井聡太三冠が勝利し、4連勝で最年少四冠を達成しました。勝利した藤井新竜王は「実感がないのが正直なところ。自分の足りないところを感じたシリーズでもあった。ここまで結果を出せているが、内容的には課題も多いので改善していきたい」と話していたそうです。西日本新聞に「藤井時代 幕開け」というタイトルで載っていた記事を一部抜粋して紹介します。
10代の天才棋士が圧倒的な強さで将棋界最高位の竜王を獲得した。羽生善治九段が、当時のタイトル七つを独占する「七冠制覇」から25年。藤井聡太四冠は現在八つあるタイトルの独占に向け、「レジェンド」の後を追うが、その強さのスタイルはかなり異なっている。
わかりやすい解説で人気を集める勝又清和七段は、羽生九段の七冠独占過程を「神がかった逆転劇が多かった。相手が魅入られたようにミスをした」と振り返る。中終盤の複雑な局面を劇的な逆転に導く“羽生マジック”には敵を巻き込む巧みな勝負術があったという。
一方、藤井将棋は劣勢になること自体が少ない。将棋AI(人工知能)が形勢の推移を示すグラフは、中盤以降徐々に優位を拡大していくことが多く、「藤井曲線」と呼ばれている。さらに、「最近の対局では、プロをうならせる妙手が毎回出ている」と勝又七段は指摘する。
…(中略)…
「…(藤井さんは)才能と努力、最新AIの研究もあり、とにかく読みが深い。藤井さんは谷川浩司九段の終盤の『光速の寄せ』も、故 大山康晴十五世名人のような達人の受けもできる。もはや人間の限界レベル。これを表現するための語彙力(ごいりょく)は尽きました」と脱帽している。
師匠である杉本昌隆八段は、「この日が来ることは10年前から確信していましたが、それでも師匠として感無量です。藤井新竜王の活躍には人間の無限の可能性を感じさせてくれます。さらなる飛躍を期待しております」とコメントされています。また、杉本八段は、このようなことも語ってあります。
「彼は小さいとき、負けると将棋盤をかかえ号泣していました。思い切り“泣く”ということで気持ちを発散していたのだと思います。しかし、泣くだけではないのです。負けたことには理由があるということで、なぜ負けたのかを分析し結論を出し、次の対局へとつないでいくのです。また、彼の将棋には“邪念”がないのです。将棋と真摯に向き合い正攻法で勝ちにいこうとする。ただ勝てばいいという「結果オーライ型」ではなく、自分をごまかさずまっすぐな将棋を心がけているのです。本当に感心させられます。将棋というのは自主性が大事で、丸暗記して上達するものではありません。自分でつかみとらなければいけないのです。これは、人生においても同じです。失敗からは学ぶことが多くあり、成功するヒントがかくされています。失敗の原因を追及しそれを排除すれば次は成功に近づきます。失敗は成功の元なのです。失敗をすることは恥ずかしいことではありません。恐ろしいのは失敗することではなく、失敗を恐れて行動しないことです…」
杉本八段からたくさんの教えを受けた藤井新竜王は、様々な悔しさや失敗を乗り越え、自ら考え、誰にも負けない努力でここまできているのだと思います。努力すれば誰もが1番になるわけでも“四冠”をとれるわけでもありません。しかし、やはり努力を続け、失敗を恐れずチャレンジし続けることはとても大切であることがわかります。
ちなみに、藤井新竜王は10月に行われた棋聖就位式で記念の扇子に“雲外蒼天”としたためたそうです。“雲外蒼天”とは、困難を努力して乗り越えた先には、明るい未来があるという意味。藤井新竜王のさらなる活躍が楽しみですね!