学校日記

【12月7日】仕事

公開日
2021/12/07
更新日
2021/12/07

つぶやき

 福島正伸さんという方の『どんな仕事も楽しくなる3つの物語』という本に素敵な話が載っていますので1つだけ紹介します。タイトルは「人であふれた駐車場」です。以下に要約します。

 仕事に本気になれない若い頃の福島さん、毎日仕事のために会社(新宿)近くの駐車場を利用していた。そこに60歳を過ぎた管理人さんがいた。とてもシャキシャキとして愛想もよく、その管理人さんは、いつも明るい笑顔で挨拶をしてくれた。大手企業を定年退職し、家が近くというだけで駐車場の管理人の仕事を始めたらしい。ある朝、駐車場に着くと土砂降りの雨になっていた。傘を忘れた福島さんがどうしようかと車内で思案していたところ、管理人さんが車に近づいてきて「傘、忘れたんじゃない?ちょうど今、降り出したばかりだから…。これ持っていきなよ」と言って、自分が持っている傘を福島さんに差し出したそうです。仕事が遅くなり、今日中に傘を返すことができないことを伝えると「私のことは気にしなくていい。とにかく持っていってください」と。その駐車場は、場所柄もありいつも満車状態。満車になると駐車場の前に「満車」と書かれた大きな看板を立てて入り口にロープを張って車が入ってこないようにする。その管理人さん以外の管理人さんもいて、満車のときは管理人室でマンガを読んだり一人で囲碁などをしているそう。ところが、その管理人さんだけは、ロープの前に立って、いかにも申し訳なさそうに「満車です。申し訳ありません…」と頭を下げていたそうです。入れなかった車が見えなくなるまで、深々と頭をさげて見送っている。満車になることが多かったその駐車場では、その管理人さんは、お客さんの苦言や罵声に耐えながら、雨の日も風の日も頭を下げられていた。そんなことをしても給料は変わらないのに…と、福島さんは思っていた。ある日、その管理人さんから、奥様の肺の病気の関係で管理人の仕事を辞めることを福島さんは聞く。管理人さんの仕事の最終日、手土産を準備した福島さんが、駐車場に行くと、目の前に信じられないような光景が…小さなプレハブの管理人室の中にも外にも、たくさんのきれいな花束やお土産が積み上げられていた。駐車場の中は、たくさんの人でごったがえし、あちこちから感謝の声が聞こえてきた。
「いつも傘を貸してくださって、ありがとう!」
「あの時、思い荷物を運んでくれて、とても助かりました!」
「おじさんに、あいさつの大切さを教えていただきました!」
次々に管理人さんと並んで写真を撮っている。終わると握手をして、感謝の言葉を告げる。中には涙している人もいる。福島さんも、お礼の言葉を伝えると、こう言われた。
「いえいえ、私は何もしていませんよ。私にできることは、挨拶することと、謝ることぐらいですから。他に何の取り柄もありません。でも、私はいつも、自分がやっている仕事を楽しみたい、そう思っているだけなんです。」

 仕事は、何のため?何のために自分は生まれてきたのか?…などと迷っていた福島さんは、管理人さんの姿や言葉から仕事を本気でやりたい!と思ったそうです。そして最後にこう書かれていました。
“つまらない仕事なんかない。仕事に関わる人の姿勢が仕事を面白くしたり、つまらなくしているにすぎない”

 こうも書かれています。
 仕事の最後の日、自分がこれまでどのように仕事に関わってきたかを、まわりの人が教えてくれます。その時、得られる最高のもの、それは人と人とのつながりの中で生まれる感動です。その瞬間、それまでのすべてのつらさや苦しみが、感謝の言葉で包まれ、生きることの素晴らしさを実感できます。

 自分の仕事に誇りを持ち、誰かの笑顔や幸せのために仕事をしたいと思います。ひとりごとでもよくお伝えしてきた「利他の心」を持って、仕事をしたいと思います。その管理人さんの姿を想像し、なんだか目頭が熱くなるのを感じました…