学校日記

【1月12日】『ウチムラ』

公開日
2022/01/12
更新日
2022/01/12

つぶやき

 オリンピック2連覇を含む世界大会13個の金メダル、2008年全日本選手権から2017年NHK杯まで国内外の大会で40連勝という凄まじいまでの記録、そして「キング」と呼ばれた体操界のレジェンド、内村航平さん(33歳)が、昨日引退を表明されました。
 以下、西日本新聞の記事を抜粋します。

 内村航平にとって、体操は「自分が自分であることを唯一証明できるもの」。だからこそ、最後まで妥協なく向き合った。練習では器具に手を置く位置を確認するためだけに、2時間近く費やした。その探究心は、関係者も「ミリ単位。地味だけど、その積み重ね」と舌を巻くほどだった。本人が強いこだわりを持つ「美しさ」は世界中の賛辞を浴びた。全工程を丁寧に積み上げて、多くの人を魅了する。「それが本物。フィギュアスケートの羽生(結弦)君の演技も近い」という。
 「キング」と称される存在になっても、自分の体操を追求し続けた。「美しさ」に完成形はないからだろう。「体操は無限に続くゲームを自分で体現している感じ」。昨春には「一生、満足はできないと思う。自分が引退して振り返っても、そんな感じ」と胸中を明かしたこともある。昨秋に北九州市で開催された世界選手権。種目別鉄棒で6位にとどまったが、生まれ故郷での現役最後の演技で完璧な着地を決めた。「今まで散々こだわってきた着地がしっかり出てくれた」と笑顔を見せ、さらに「全てを一瞬で伝えられたのかな」と続けた。
 小学校時代は妹より蹴上がりを覚えるのが遅かったという。「すごい恐がりだった。(実家の体操教室の)トランポリンで遊ぶうちに、何も怖くなくなった」。恐がりの少年は「美しさ」の伝道師となり、数々の伝説を残して第一線から退いた。

 両親がされていた体操クラブで3歳から体操を始めた内村航平さん。30年にも渡って、とことん体操を追求し、世界が尊敬する存在にまでのぼりつめました。中学2年のときに「将来の夢は?」と聞かれると「五輪で金メダル」と答えていたそうです。一見クールに見える内村さんですが、常に高い目標を持ち、誰もが認めるほどの努力をしていたことが、数々の言葉からもわかります。
◆自分の中の本当に追いつけないぐらいの理想を持って、それに一歩でも近づけるように、自分の中で努力するという感じです。
◆僕は天才ではなく努力でここまでこれたと思っています。人一倍努力しているという自負はあります。
◆世界で一番練習した者が世界一になる。
◆世界チャンピオンでいるためには世界で最高の練習をしなくてはならない。
◆やっぱり着地なんですよね。誰が見ても終わりってわかるじゃないですか。そこで止めた瞬間、ワーっと盛り上がる。自分も周りも。着地一つで一体感が生まれる、感動が生まれる。有終の美って一番そこ。

 海外のメディアでも内村さんの引退にあたり「男子体操界において10年以上にわたり、優雅さ、精密さ、謙虚さを備えた比類なき基準を確立した」と称えられています。また、先に引退した世界選手権の「床」で金メダルを獲得した白井健三さんが、ある番組のインタビューでこう答えていました。
「内村さんの名前のついた『技』がなかったという人がいますが、内村さんの体操はそのレベルではないのです。その演技すべてが『内村航平そのもの』、要するに『ウチムラ』なのです。ですから異次元の人なんです…」
 内村さんが残した功績は、その記録だけでなく体操界をはじめスポーツ界に多大な影響を与えたこと、また、見る者すべてに大きな感動を与え続けたこと、そして、「目標を持ち、努力し続けることの大切さや素晴らしさ」を改めて教えてくれたのだと思います。