学校日記

【5月26日】人が人として生きること

公開日
2022/05/26
更新日
2022/05/26

Kのつぶやき

 東日本大震災のあとにテレビで頻繁に流れていたCMのことを、3年前の始業式などで紹介したことがありました。映像の中に出てくる言葉は下の言葉です。

「こころ」はだれにも見えないけれど 「こころづかい」は見える
「思い」は見えないけれど 「思いやり」はだれにでも見える

 これは、宮澤章二さんの『行為の意味』という詩をもとにつくられた言葉です。心や思いを育てていくことは人間にとって、とても大切なことだと思います。今朝の西日本新聞のコラムに、最近毎日報道されているある事件のことが載っていました。

 463世帯分の給付金計4630万円が誤って住民一人の口座に振り込まれたことに始まる山口県阿武町の事件。逮捕された男は「ネットカジノに使った」と話していたが一転、町が9割超の4299万円を法的に確保したという。誤給付から10日ほどで大金が消え、町の提訴から10日余で大半が戻った。指一本でスマートフォンを操作するだけで、大金を動かせるキャッシュレス時代の恐ろしさを目の当たりにした。4600万円を現金でそろえたら、1万円札では4600枚で厚さ46センチ、重さ4.6キロ。1円玉なら4600万枚で重量46トン。とても持ち運べない。これなら重みを実感し、誤入金されても使おうなんて考えなかったかもしれない。キャッシュレス決済は日常に深く浸透。現金に触れる機会が極端に減った中には、おつりの意味やもらい方、紙幣と硬貨の価値の違いが分からない子もいるとか。学校での金銭教育や消費者教育が求められるのもむべなるかな(※むべなるかな…それはもっともだな・その通りだな)。
「大切なものは、目に見えない」。サンテグジュペリの「星の王子さま」の一節だ。時代は移ろい、目に見える価値の代表だったお金までもが見えなくなった。そもそも町職員の単純ミスが発端の騒動。責任感や道徳といった目に見えないものが、いかにおろそかにされているかも知らしめた。(星の)王子さまはこんな言葉も。
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ」

 私は、実際のお金のやりとりが目に見えないキャッシュレス決済がなんとなく怖くて、しばらくはまったく使いませんでした。ところが、最近ではその便利さによって頻繁に使うようになりました。それでもこういう事件のことを知ると、怖くなります。コラムにあるように、お金の価値や大切さについても改めて子どもたちに考えさせたり、教えたりすることも大切なのだろうと思います。そして何より、責任感や道徳心を含め「心を育てる」ことがいかに大切かということを教えてくれていると思います。世の中は大変便利になり、ある意味私たちの生活を豊かにもしてくれていますが、一方で「目に見えない大切なもの」がおろそかにされていないかを考えるべきだということです。心が育っているかは、その言葉や行動、姿勢にあらわれると思います。私たちは、子どもたちとともに「目に見えない大切なもの」を「心の目」でしっかりと見て、考え、判断し、行動していかなければならないと思います。
 そして、その「こころや思い」が、人を笑顔にしたり、人を幸せにする「こころづかいや思いやり」につながっていけばいいと思います。
 宮澤章二さんの『行為の意味』は、次の言葉で締めくくられています。

あたたかい心が あたたかい行為になり
やさしい思いが やさしい行為になるとき
「心」も「思い」も初めて美しく生きる
それは 人が人として生きることだ