学校日記

【5月27日】待つ

公開日
2022/05/27
更新日
2022/05/27

Kのつぶやき

 日本教育新聞のコラム「不易流行」からです。

 この春、知己(ちき:知り合い・親友)を得た。ある人と連絡先を交換しようとしたら、通信事業者のキャリアメールのアドレスを教えてくれた。他にも数多くの便利なアプリがある中で、あえて今もなお使い続けているという。「言葉が軽くなった」とその人は言う。既読マークがついたメッセージは即時の返信が求められ、相手を思って言葉を吟味することが希薄になっている、と。確かに、年を追うごとに時間の流れが早くなっている。
 この状況を、哲学者・鷲田清一氏(元大阪大学総長)は「『待つ』ということ」の中で「待つことができない社会になった」と喝破(かっぱ:物事を見抜いてはっきり言うこと)した。しかも、同書が発刊された平成18年夏に、である。それからさらに時は流れ、私たちの「せっかち」な生活は加速を続けている。鷲田氏は言う。せっかちは、「未来に向けて深い前傾姿勢をとっているようにみえて、じつは未来を視野に入れていない。未来というものの訪れを待ち受けるということがなく、いったん決めたものの枠内で一刻も早くその決着を見ようとする」と。
 手紙を書くことの良さが言われるようになって久しいが、それに取って代わったはずのキャリアメールさえ、文案を練るときの思考に心地よさを感じた。時代の流れは不可逆(ふかぎゃく:再びもとの状態に戻れないこと)である。その中で忘れられつつある価値を子どもたちに伝えることも、私たちの使命であろう。

 昨日のひとりごとでも、便利と引き替えに見えないものへの価値がわからなくなっている、または見えなくなっているということをお伝えしました。私も使っているLINEなどのSNSでも、早く「既読」の状態にし、早く返事を返すことがよいこととされることもあるかもしれません。「既読」にならないと「何で早く見ないのか!」、既読になったのに返信がないと「何で早く返信しないのか!」と不満に感じる人も少なくないように聞きます。さらには、「遅い」ということが、トラブルのきっかけになることも…。
 相手のことを思いやり、たとえ文字であっても、その「思い」が伝わるように吟味して使うことが大切なのだと思います。時に、丁寧な字で書かれた手紙やハガキをいただくと、とても嬉しくあたたかい気持ちになります。自分のために、一生懸命書いてくれたのだと、感謝の気持ちでいっぱいになります。「待つことができない社会になった」「未来を視野に入れていない」という鷲田さんの言葉がありましたが、もっとじっくりと、思慮深く考え、大切な言葉をきちんと交わし、未来へ向けて着実に進んでいくことが大事なのかもしれません。
 じっくり待った先の喜びは何ものにも代えがたいことがあります。相手のことを思い、「楽しみに待つ」ことができるようにしたいものです