【11月22日】不器用な人
- 公開日
- 2022/11/22
- 更新日
- 2022/11/22
Kのつぶやき
元JAL国際線チーフパーサーである黒木安馬(くろきやすま)さんの著書『雲の上で出会った超一流の仕事の言葉』に、秋山木工創業者である秋山利輝さんの言葉「不器用な人間ほど一流になれる」について書かれていますので紹介します(一部抜粋・要約)。
成長の段階には「守・破・離(しゅ・は・り)」がある。
「守」はトレーニングのことであり、師匠の型の真似だけに没頭する段階。「学ぶ」は「真似ぶ」からきている。そのパクリの連続が本物として通用できるようになり、後世にまで引き継がれるようであれば、「仕事を似せて引き継ぐ」→「仕似」→「老舗(しにせ)」になる。
「破」は、師からパクリ盗んだものに、自分で加味できるまで成長した段階。
「離」は、師匠から離れ、独自の想像力が発揮できて、自力で大空に飛翔するまでに達した段階。それが、世間から賞賛を受けるまでに達すれば、出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ:弟子が師匠よりもすぐれた才能をあらわすこと)となる。
つまり、物事のすべての始まりは「守」からである。真似るべき原型がすべてを決定づける。従って、よき手本になる師、どのような「金型(かながた)」との出会いがあるかが、運命を大きく左右する。
秋山利輝さんは、皇室や迎賓館、国会議事堂など超一流の施設で使われる家具などをつくっており、NHKや「ガイアの夜明け」などで魂の人材育成の師匠としても紹介されている方。秋山さんの会社に入ってくる10代の若者は全員住み込みで4年間の工房下働きをする。起床は5時前、毎日起きたらマラソンをし、隣近所の掃除をし、自分たちで朝食をつくり、自由時間となるのは夜8時過ぎ。そのあとは、自分の道具の手入れや自主訓練を行う。弟子たちは、罫線なしの真っ白なスケッチブックを渡され、反省や気づきを先輩と話しながら記入する。その日誌は親元に送られ、感想や応援文が書き込まれて再び返ってくる。休みは盆・正月のみ、携帯電話も禁止などとても厳しい状況での修行を4年間行う。そのあと職人時代「破」の4年間を過ごし一人前になると、その時点でクビになる。それが「離」である。
私心(ししん)を捨て世のために働く、社会にとって本当に必要とされる真の職人を育てている秋山さんは、「もし世界に広めたいとすれば、家具よりもうちにいる職人ですよ!」と。
どんなプロも最初は素人、大工さんだって金づちを手にして生まれてくるわけではない。努力に勝る天才なし。天才とは、努力の別名である。秋山さんは言う。
「器用ゆえにスタートは成功するが傲慢(ごうまん)になりやすい人間と、不器用だから初めは失敗ばかりだが地味な人間、10年後に勝つのは後者です。不器用な人間ほど一流になれる。人間性を上回る作品はできませんから!」
超一流の方の言葉は、シンプルでもあり、本当に奥が深くもあり、何よりとても考えさせられます。「天才とは努力の別名」「人間性を上回る作品はできない」「不器用な人ほど一流になれる」…。何の世界であっても、やはり“人間性”が大切であり、粘り強い“努力”しかないのだと思います。