学校日記

【2月22日】アート思考

公開日
2023/02/22
更新日
2023/02/22

Kのつぶやき

 美術教師でアーティストの末永幸歩さんが書かれた本、『13歳からのアート思考』の見開きのページにはこう書かれています。
「みなさんは、美術館に行くことがありますか?美術館に来たつもりになって、次の絵を『鑑賞』してみてください」
 その次のページには、クロード・モネ(1840〜1926年)の睡蓮(スイレン)というタイトルの絵が載っています。その絵の下には、絵の名称や解説が…。
 そして、次のページを開くと…
「さて、ここで質問です。いま、あなたは『絵を見ていた時間』と、その下の『解説を読んでいた時間』、どちらのほうが長かったですか?」

 ハッとさせられる自分がいました。末永さんの言葉はこう続きます。
「おそらく、『ほとんど解説文に目を向けていた』という人がかなり多いはずです。あるいは、『鑑賞? なんとなく面倒だな…』と感じてすぐにページをめくった人もけっこういるかもしれません。私自身、美大にいたころはそうでした。美術館を訪れることは多かったにもかかわらず、それぞれの作品を見るのはせいぜい数秒。すかさず作品に添えられた題名や制作年、解説などを読んで、なんとなく納得したような気になっていました。いま思えば、『鑑賞』のためというよりも、作品情報と実物を照らし合わせる『確認作業』のために美術館に行っていたようなものです。これでは見えるはずのものも見えませんし、感じられるはずのものも感じられません。…いかにも想像力を刺激してくれそうなアート作品を前にしても、こんな具合なのだとすれば、まさに一事が万事。『自分なりのものの見方・考え方』などとはほど遠いところで、物事の表面だけを撫でてわかった気になり、大事なことを素通りしてしまっている…そんな人が大半なのではないかと思います」

 その次のページには、4歳の男の子のエピソードが載っています。内容を要約すると以下のようなことです。
 岡山県の大原美術館にあったモネの【睡蓮】を見た4歳の子が、絵を指さして「かえるがいる!」と言ったそうです。もちろん実際にカエルは描かれていません。その場にいた学芸員の方が「えっ、どこにいるの?」と聞き返すと、その子は「いま、水にもぐっている」と答えたそうです。これをくだらない、子どもだから…と思うかどうかは人それぞれ。しかし、この本には続けて、次のようなことが書かれています。
◆男の子は、既存の情報に「正解」を見つけ出そうとはせず、自分のものの見方でその作品をとらえ、自分なりの答えを手に入れている。
◆動かない絵の前ですら「自分なりの答え」をつくれない人が、激動する複雑な現実世界の中で、果たして何かを生み出すことができるのか?
◆ネットニュースやSNSの投稿等を見ただけで、「世界を知った」かのような気分になり、子どもの頃に持っていた“アーティスト性”である「自分だけのものの見方や・考え方」を喪失していないか?
 
 末永さんは、こんな難しい時代だからこそ、「自分だけのものの見方で世界を見つめ、自分なりの答えを生み出し、それによって新たな問いを生み出す」、そんな“アート思考”が大切なのではないかとおっしゃっています。
 もちろん、ひとりよがりのわがままな考えはいけないと思います。しかし、既存の考えばかりにとらわれたり、一部の情報に惑わされるようなことではいけないのだと思います。物事を多面的・多角的にとらえる“想像性”や、新たな発想、新たなことを生み出す“創造性”を高めていく必要があるのだと思います。時に大人は、“柔軟性”にかけるともいわれます。柔軟でしなやかな思考、そして心を持ち合わせることもこれからの時代は特に必要なことかもしれません。皆さんはどう思いますか?