【10月6日】心穏やかに…
- 公開日
- 2025/10/06
- 更新日
- 2025/10/06
校長のひとりごと
今朝の西日本新聞のコラム『春秋』からです。
星の文人。そう呼ばれた明治生まれの随筆家、野尻 抱影(のじり ほうえい)。〈空を見上げながら歩いていれば、どんな晩でも淋しくはない。大勢の友だちのウィンクに逢っているのと同じだからである〉。今年は生誕140年。冥王星の名付け親は、星の和名の収集に情熱を傾けた。例えば、オリオン座の三つの星は各地に方言名がある。福岡は「合桝(ごうます)」、大分では「三太郎星」。長崎や沖縄ではエビ漁の網の形から「横関(よこぜき)」と呼ばれた。代表作に、星にまつわる話を1日1話つづった「星三百六十五話」がある。専門的過ぎず情緒に流れず、読み飽きない随筆が並ぶ。その一編「中秋名月」は戦後間もなく書かれた。〈こうして青い光に浸りながら澄み切った空の鏡を見上げていると、やはり戦争の間に亡くなった人たちや、遠くへ疎開したきりになった友だちのことなどが思われる〉。満ち欠けがなく、いつも満月ならこんな感慨は弱まるだろうとも。
天文学者でさえ、100年前には「月人」のような生物の存在を否定していなかったと振り返る。〈月人の存在を信じていられた時代の心境がうらやましくもなってくる。地球に「隣りあり」との感じは、明るくのんびりしていたに違いない。特に今の荒れた世情と比べるとである〉。
きょうは中秋の名月。抱影が嘆いた世情はいま、はるかに荒れている。それでも月は隣から地球を、人を照らす。見上げてごらん、夜の月を。
「中秋の名月」とは、旧暦の8月15日の夜に見える月を指します(旧暦での秋は7月~9月となっており、そのちょうど秋の真ん中が旧暦の8月15日となる)。中秋の名月をめでる習慣は平安時代に中国から伝わったとされています。春や秋の月は、見る高さもちょうどよく(夏は低い位置、冬は高い位置に見える)、特に秋は天気にも恵まれ、空気も澄んでいるので、月がとてもきれいに見えます。ただ、「中秋の名月」と「満月」は必ず一致するとは限りません。今年は今日ではなく明日が満月となります。2021年~2023年は3年連続で一致しましたが、次に中秋の名月と満月が一致するのは2030年となります。
ただ、今日の大野城市の夜は「晴れ」予報なので、満月でなくとも、ほぼまん丸のきれいな月が、夕方には東から南東の空に見えるはずです。そして深夜0時頃には南中(もっとも空の高い位置)するようです。
今夜は、子どもたちも私たち大人も、少しの時間でもいいので幻想的で美しい「月」を眺め、心穏やかに、そして心癒されたいものです。
(ひとりごと第1087号)