【11月20日】復元力
- 公開日
- 2025/11/20
- 更新日
- 2025/11/20
校長のひとりごと
一昨日発生した大分県佐賀関での大規模な火災は170棟が延焼し、1名の遺体も見つかったとの報道があっていました。佐賀関は、古くから続く港町で、木造住宅が隣接し、通りが細い路地ばかりで、消防車が通れず、消火活動も非常に厳しい状況にあったことが伝えられていました。強風のために火の粉が舞い散り、次々に住宅を襲い炎が5mほどの高さまで上がり、夜空を赤く染めるほどの火災でした。いまだ完全な鎮火にはいたっていないとのこと。最大180人の方が非難され、一瞬にして大切な我が家を失った方々が涙されたり途方に暮れておられる映像が流れ、胸が痛くなりました。まずは完全な鎮火とともに、被災された方々の今後の生活等の支援、そして街の復旧等をしていかなければなりません。
また、太宰府市でも火災があったと、今朝のニュースで流れていました。乾燥するこの季節、火の取扱い等含め十分に気をつけないといけないと改めて思います。被災された方々へ、心よりお見舞いを申し上げます。
さて、政治・教育ジャーナリストである清水克彦さんの著書『知って得するすごい法則77』の「ドレイゼンの復元力の法則」からです。
「人は失敗や挫折を経験しても、その経験から学ぶことで、前よりも強く、より回復力のある人間になれる」
1960年代にイギリスの心理学者、ジョン・ドレイゼンによって提唱された「ドレイゼンの復元力の法則」を紹介します。
筆者が教育問題を取材する中で感じてきたのは、「カーリング育児」が増えてきたという思いです。ご存じのように、カーリングは、投げたストーンが氷の上をスムーズに進むよう「先回り」し、ブラシでゴシゴシとリンク表面をこするスポーツです。それと同じように、子どもた失敗しないよう、先に先に手を打とうとする過干渉の保護者が多すぎるというのが正直な感想です。「ドレイゼンの復元力の法則」は、もとはと言えば、「おかしくなった状況を復元するための時間は、おかしくなるまでの時間に反比例する」という法則ですが、ドレイゼンは、動物実験を通じ、「失敗した動物は試行錯誤を繰り返し、失敗や挫折を回避する方法を習得し、成功する方法を学ぶ」という結果も示しています。この結果は、ビジネスやスポーツ、子育てなどさまざまな分野で応用されています。
子育てで言えば、子どもにはどんどん失敗させ、焦らず時間をかけて「成功した」という実体験を味わわせるためと同時に、タフな精神力を養うことが重要です。そのためには、保護者は「カーリング育児」になっていないかチェックし、子どもが失敗しないよう「先回り」する管理型子育てから、失敗から立ち上がろうとしている子どもをサポートする支援型子育てに転換すべきです。…(後略)…
私は、本校の教育目標に「しなやかな心」という言葉を入れています。その意味として「志をもって自分を律しながら常に学び続けること」、「様々な課題に対し周りと協働して粘り強く取り組む心や姿勢」、そして、そのときに必要な力として「やり抜く力(GRID)や耐性」「レジリエンス(回復力・適応力・弾性)」をあげています。
ですから、子どもたちに私はいつもこんなことを言っています。
「大人だってたくさん失敗するのだから、皆さんが失敗するのは当たり前。まずは一歩踏み出すこと、チャレンジすることが大事だよ。一生懸命な、前向きな失敗はどんどんしなさい。それから学ぶことはたくさんあるし、そのチャレンジや失敗が自分の力や成長に大きくつながっていくから…」。
大人になって、社会人になって、一生懸命やってもうまくいかないことたくさんありますよね? 頑張ったのに失敗することもありますよね? でも、そこから学ぶことはたくさんありますし、たくさんの学びと経験がその後の財産になっていきます。ですから、失敗したりうまくいかなかったりしたときに、落ち込んだとしても、そのことをどう捉え、前向きに考え立ち上がることが大事だと自分の経験からも思います。たくさんの失敗や経験が新たな成長や成功へとつながり、多少の困難や問題にぶつかったとしても、「何とかなる」「こうすればきっと解決できる」という前向きな姿勢と行動につながっていくと思います。
親であれば、わが子に対して「失敗しないでほしい」「うまくいってほしい」と願うのは至極当前のことだと思います。が、それが行き過ぎると、「カーリング育児」とやらになって、将来困難に遭ったときに、うまく対処できなかったり、失敗し立ち上がれない子に育っていくのかもしれません。「様々な場面において上手に支援する」ことの一つの「正解」はないのかもしれませんが、私たちは十分に考えて支援や声かけをしていくことが大事なのだと思います。
[ひとりごと 第1118号]