【5月26日】きょうそう
- 公開日
- 2023/05/26
- 更新日
- 2023/05/26
校長のひとりごと
1月のある寒い昼下がり、一輪の梅の花が開きました。その花の名は“太郎”。開花したばかりの太郎は、あたりを見回しました。「おっ、まわりはまだツボミばかりだ。どうやら最初に咲いたのは俺みたいだな」。しかし、後ろのほうを見てみたら、1メートルくらい離れたところに、もう一輪、咲いたばかりと思われる花がキョロキョロしていました。その花の名は“一郎”。
太郎「おまえ、咲いたばかりなんだろ。最初に咲いたのは俺だからな」
一郎「おまえだって咲いたばかりだろ。一番に咲いたのは俺だ」
太郎「証拠でもあるのか?」
一郎「おまえの方だって証拠はあるのか?」
太郎「証拠はないが、俺が一番だ」
一郎「いや、俺が一番だ」
太郎と一郎が言い争っていたら、近くにあった別のツボミが開きました。とても大きな花びらをもった立派な花です。その花の名は“華夫”。
華夫「君たち、さっきから、何を言い争っているんだ?どっちが先に咲いたって、そんなことはどうでもいい。花は大きさがすべてだよ。僕を見てごらん。僕が一番大きくて立派な花だ。君たちは貧弱だ」
太郎「大きいだけなんてつまらない。早く咲いたほうが偉いんだ」
一郎「一番、早く咲いたのは俺だぞ」
華夫「花の価値は大きさで決まるんだ」
この言い争いを見ていた人間が、太郎と一郎と華夫に言いました。「君たちはみな、同じ一本の木に咲いた花なんだよ。同じ命なんだよ」
それを聞いて、太郎と一郎と華夫は自分たちの愚かさに気づき、恥ずかしさに顔をあからめました…
これは野口嘉則さん著『心眼力』の中の一節です。野口さんは、このあとこう綴っています。
彼らには、自分たちをつなぐ枝や幹が見えていなかったのです。他の花を攻撃するということは、自分を攻撃しているのといっしょなのです。同じ命なのですから。
私たち人間も同じです。私たちもつながっているのです。有名な心理学者のユング博士は「私たち人間は、無意識の奥底でつながっている」と言いました。そして、すべての人間の意識をつなげている“意識の海”のようなものを、集合的無意識と呼びました。ところが、この意識のつながりは目には見えません。肉眼で見るならば、自分と他人は完全に分離していて、別物に見えるのです。だから他人には負けたくないのです。だから他人を許せないのです。私たち一人一人は個性をもちながらも“人類”という一本の木に咲いた花、つまり同じ命を共有する兄弟なのです。別の言い方をすると、私たちはみんなで一つのチームを形成しているのです、それは、人間チームという一つのチームであり、大きく見れば地球生物チームです。いや、もっと大きく見れば、宇宙チームとも言えますね。
話が大きくなりすぎて、難しくなったかもしれませんが、世界を見渡すと未だに戦争や紛争が続き、日本でも痛ましい事件や事故が頻発しています。今こそ、人と人が繋がり、力を合わせ解決に近づくように努力しなければなりません。
教育の世界でもそうです。教職員が一丸となることはもちろん、保護者、地域もしっかりと繋がり、目標を共有し、チームとして子どもたちのために尽力しなければと思います。野口さんはこのような言葉でしめています。
「チームメイトどうしで競争(きょうそう)している場合ではありません。今こそ共創(きょうそう)するときです。この世界の幸せの輪を広げることで、素晴らしい未来をともに創造し、私たちのチームの進化に貢献しましょう!」