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【6月15日】直感力

公開日
2023/06/15
更新日
2023/06/15

校長のひとりごと

 昨日紹介した羽生善治さんの『直感力』の「おわりに−直感を信じる力」に、次のように書かれています。

 何をしたらいいのか、どうなっているのか見えにくい、わからない時代を生きていかねばならない。そのときのひとつの指針となるのが直感だと考えている。
 さまざまなことを比較、分析することも重要ではあるが、直感とは迷いも悩みも起こりえない瞬間を捉えたものだ。その中に大きなヒントが隠れていることも多い。そのヒントを手がかりとして考えを進めていくと、思いがけない瞬間、発見、未来がある。いろいろな人の話を聞いても、最終的に行動を決める取捨選択は、自分自身で行っているはずだ。それに気づきさえすれば、何かの判断をする、決断をするというときに、目の前の現象だけにとらわれることなく自分自身に拠り所を求めることができるのではないだろうか。
 自分自身に拠り所を求める…その根底には経験を重ねることで蓄積され、かたちづくられた人生観や価値観といったものが横たわっているはずだ。
 それに基づいた選択がベストでなかったとしても、少なくとも自分のスタイルには合っているはずだ。だから、次にミスをする可能性も小さいし、ある種の心地よさも内包している。背伸びして成長していく方法もあるが、自分の流儀を見つけてそれに合った選択をしていくという覚悟を迫られている気がしてならない。

 膨大な学びと経験の中で身につけた羽生さんの人生観や価値観がこの本にたくさん書かれています。そして熟慮した上での「直感」を信じて、次の一手を打たれ数々の記録をつくってきた羽生さんの言葉は私たちに様々なことを教えてくれます。
 AI等の急速な進化に代表される高度情報化社会、そして未来が予測困難なこの時代に情報を整理し、分析し判断していくことは当然ながら大切です。しかしながら、ときに瞬間的に判断しなければならないこと、正解がまったくわからないこと、「100%正解」かどうかわからないことがあることも、私たちは経験上知っています。ですから、これまでの経験や学びで蓄積されたもの、そして人の考えや意見も聞きつつ、自分の「直感」を信じ、最後は「自己判断」「自己決定」していくしかない場面が必ずあります。
 ですから、子どもたちにもさまざまなことを学んでもらいたいし、たくさんのチャレンジをして、経験を積んでもらいたいと思います。それは、失敗や困難も含めてです。うまくいくことばかりの経験だけでは、長い人生を生き抜くことは困難です。つまづいたり転んだりして学びつつ、培った価値観、人生観の中でたくましくしなやかに生き抜いてほしいと思います。子どもたち自身が自己選択・自己決定していく中で「直感」を信じて選ぶ場面がこれからもあるでしょう。より研ぎ澄まされた「直感力」を子どもたちが身につけるためのよりよいサポートを私たち大人がしていかなければと思います。