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【10月4日】脳磨き(その1)

公開日
2023/10/04
更新日
2023/10/04

校長のひとりごと

 人間学を学ぶ月刊誌『致知』に、脳科学者の岩崎一郎さんの言葉が載っていました。岩崎さんは、幸せな人生を歩むためにも脳を鍛える「脳磨き」が大切だと言っています。

 脳は何かに一所懸命取り組んでいる時に働いているというのがこれまでの常識でした。しかし最新の脳科学では、何も考えずにボーッとしている時でも同じくらい活発に働いていることが明らかになりました。このことは自分でコントロールできない潜在意識、無意識の部分を有効活用できなければ、人は幸せな生き方ができないことを示唆しています。
 スポーツなどではよく、フロー状態、ゾーンという特別な集中状態に入ると驚異的な力が発揮できると言われますが近年、そこに入るスイッチが脳幹や島皮質にあることが明らかになりました。ただ、無意識領域にこのスイッチはあるため、自分で意図してそのスイッチを入れることはできません。しかし、普段からの脳磨きをして無意識領域を整えていくことで、フロー状態(ゾーン)に入る確率を高めることが可能となります。逆に、無意識状態を整えていないと、フロー状態と逆のFF状態(動物が外敵に直面したときのような極度の緊張状態)に入ることが多くなります。FF状態が慢性化すると脳を破壊し、無気力やうつ状態に陥ってしまうことになります。昔の剣豪が精神修養に努めたのは、心を整えることで命の危険にさらされたときでも、FF状態ではなく、フロー状態に入る確率を高めたといえます。大谷翔平選手がゴミ拾いを励行するのも、そこに通じるものがあるのではないかと考えます。
 フロー状態は、最新の脳科学で明らかになってきた「Awe(オウ)体験」の一部だと考えられています。宇宙飛行士が宇宙空間から青く光る地球を見ると、自分は大いなる何者かに生かされていると実感して深い感謝の念が湧いてくるといいます。こうした心震える感動体験をAwe体験といい、その時の脳は非常に活性化し、エゴが低下して謙虚な気持ちになることが明らかになっています。Awe体験は、大自然の前でちっぽけな自分を感じた時や、徳の高い人の言動に感動した時なのにも体験することがあります。………脳磨きを通じて無意識領域が整うと、このAwe体験をしやすくなるのです。
 さらに、フロー状態はAwe体験の一部であるため、皆で一緒にAwe体験をすると、とんでもない成果を上げることができます。2018年平昌五輪のスピードスケートで、日本チームはスケート王国オランダを破り見事に金メダルを獲得しました。スポーツでは、お互いの信頼関係を深め、心を一つにして試合に臨んだチームが土壇場で凄まじい底力を発揮することがありますが、これはチームでAwe体験をしている状態と言えます。

 読みながら、「へぇ〜」と思うと同時に、納得する部分が多々ありました。特に、スポーツの世界ではある種“神がかり”的な力が働いたようにして、それまで一度も勝ったことのない相手に勝つ経験を私も実感することがありました。すべてがうまくいくような「ゾーン」に入った状態…。皆さんにもそんな体験があるのではないでしょうか。
 岩崎さんは、スポーツだけでなく、知性面でもこのようなことは起こると言っています。「集合知性」と呼ぶそうですが、それを発揮しているチームは、一人ひとりが生きがいや人生の充実感を感じつつ、天才知性を遙かにしのぐ力を発揮できるようになる。このことは、互いに強い信頼関係を醸成し、心を一つにすることの大切さを物語っている、と述べられていました。
 心を整える…脳を整える…とても大切なことなのですね。では、どのように「脳磨き」をするのか?それについては、明日のひとりごとで紹介します。