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【10月26日】思い

公開日
2023/10/26
更新日
2023/10/26

校長のひとりごと

 いよいよ明日は文化発表会。各クラス、最後の合唱練習をしていました。明日はそれぞれの思い、様々な思いをひとつにして、心を込めて歌い上げてくれるのではないかと思います。

 私自身は担任をした23回すべての合唱が心に残っています。子どもたちのおかげで何度も“金賞”をいただきました。しかし、たとえ、銀賞であっても、銅賞であっても、何の賞もとれないときでも、子どもたちは涙を流し、最後は「一緒に歌えてよかった」「仲間と出会えてよかった」「忘れられない合唱になった」…などと、充実感や満足感でいっぱいになってくれていました。それこそがまさに合唱をはじめとする行事のよさだと思っています。
 取組の間、クラスの中で揉めたり、練習がうまくいかずリーダーが悩んだり泣いたり、クラスで話し合いをしたり…たくさんのドラマがあり、様々な困難を乗り越えた先に迎える本番。ステージに立つだけで緊張もします。しかし、今まで取り組んできた練習を信じ、仲間を信じ、誰よりも練習を頑張ってきた伴奏者の思いを感じ、指揮者の思いを理解し、精一杯感情を込めて一生懸命に歌う。友達との声の響きを感じながら、ピタッと合う呼吸、心地よいハーモニーを全身で感じながら歌う。この仲間と出会ったことが何よりも奇跡。こうして共にステージに立って、素敵な曲を一緒に歌うことができる幸せ…「私たちこんなに成長しました!」「こんなに素敵な仲間といることができて幸せです!」…そんな思いで、大好きな人を思い浮かべ、その人に届くように歌う。そうすると会場で聴いているすべての人にその思いは伝わる。それが「うったう(訴える)」こと、すなわち「うたう」ことです。歌い終えてステージを降りるとき、何人もの子が泣いています。悔しくて泣いているわけではありません。この素敵な仲間と歌えた幸せ、自分たちの歌に感動した満足感、この仲間と歌う最後の合唱…そんなことを感じ、涙を流しているのです。そうなれば、もう賞は関係ありません。“金賞”以上の宝物を子どもたちは手にしたのです。
 そして、結果発表…隣の友達と手を繋ぎ、顔を伏せ、祈る子どもたち。担任はその姿にまた感動する。あぁ、やってよかった。この子たちに出会えてよかった。そしてやっぱり欲が出て…この子たちに“金賞”をとらせたい…と思ってしまいます。その結果“金賞”だったこともあれば、“銀賞”、そして何の賞もとれないことも…。教室に帰り、ほとんどの子が泣いている。嬉しくて泣いていることもあれば、悔しくて悔しくて泣いていることも…。“銀賞”のときのクラスの子に言いました。
「こんなに悔しくて泣いているクラスはきっとありません。“銀賞”でよかったと喜んでいいところを、こんなにも悔しくて泣ける。それだけ君たちが頑張ったということ。精いっぱいに取り組んだということの証。それだけで素晴らしい! みんなでステージに立てて歌えて幸せだね。私は君たちの歌に感動しました。心が震えました。そして、これまでの君たちの頑張りを知っているから、心から拍手を送りたい。本当に君たちは素晴らしい!君たちの心の中に、決してお金では買うことができない“宝物”ができたね。私にこんなに素敵な思いをさせてくれてありがとう。君たちに心から感謝します…」
 そんな思いを伝えます。子どもたちはポロポロ涙を流しながら、時折うなづきながらまっすぐに目を見て聞いてくれます。そのまっすぐさに、気づくと私も泣いていました。
 やっぱり、子どもってすごいなぁ、担任できて幸せだなぁと思います。そして、心からありがたいと思います。子どもたちに感謝の気持ちでいっぱいになります。
 合唱という取組によって、子どもたちの心は一つになり、そのあとの日常生活にいかされていきます。クラスの絆は深まり、様々な場面で今まで以上に助け合う姿が見られるようになります。頑張ることの素晴らしさを実感できた子は、また次の目標に向けて頑張ることができます。そうやって人は成長していくのだと思います。

 明日、保護者の方々、地域の方々に見ていただくことはできません(本当に申し訳ありません)。しかし、きっと子どもたちはその思いを、会場におられない方々にも届くように歌ってくれるのではないかと期待しています。
 子どもたちにとって、素敵な輝く一日となりますよう、心から願います。