最近の記事はこちらメニュー

最近の記事はこちら

【12月6日】恵まれない幸せ

公開日
2023/12/06
更新日
2023/12/06

校長のひとりごと

 100円ショップとして有名な「ダイソー」の創業者である矢野博丈(やのひろたけ)さんのコラムが、月刊誌『知致』に載っていました。
 矢野さんは大学卒業後、結婚した奥さんの家業である魚の養殖業を継いだが莫大な借金を背負い夜逃げ。その後、借金を返済するべく、9回の転職を重ねながら29歳でダイソーの原点となる「矢野商店」を広島で創業します。雑貨をトラックいっぱいに積み、移動販売していました。ある日、露店を開く予定が雨予報のため急遽中止。ところが、当日朝には雨も上がり晴れたため、午後から空き地にトラックで商品をおろそうとすると、前日に配布したチラシを見たお客さんが殺到し、値段などを次々に聞いてくる。一人一人に答えることが面倒になり、「ああもう、全部百円でええよ!」と言った一言で、商品が飛ぶように売れたことが、100円ショップを始めるきっかけになったそうです。その後、お客さんからのクレームもあり、儲けを度外視して良い品を100円でという「顧客第一主義」に徹底したことがよかったと語られています。
 そうして売り上げが伸びているとき、放火によって、事務所やトラック、商品まですべてが燃え、多額の借金と家族、従業員だけが残り、他はすべて失います。それでも諦めず、周りの力も借りて、店頭での販売を始め、業績を少しずつ伸ばします。火事のおかげでいつ何が起こるかわからないことを知り、たった100円であったも大切にすること、要するにお金に対してもしっかりと感謝することに繋がったそうです。夜逃げや火事など、常人到底させてもらえない体験をしたことで、それらのことを覆す力がつき、その後の成功に繋がったと話されています。
 
 また、矢野さんが20代のときに聞いた京都のお坊さんの言葉のことも書かれていました。
「好むと好まざるとにかかわらず、これからお二人には艱難辛苦(かんなんしんく)が押し寄せてきます。それを乗り越えたら、きっといい人生が送れるでしょう。人生に無駄なことは一つもありません」。
 その言葉を聞いた聞いたとき、最初矢野さんは「何を馬鹿なことを言うんだ。俺の人生無駄しかないじゃないか」と思ったそうですが、その後、なるほど苦労やたんへんなことがあったからこそ今があるという考えに変わったことがよかったとも言っています。

 最後に、矢野さんが20代の人に伝えたいことが書かれていました。
「苦労ほど有り難い恵みはない。幾多の苦労に見舞われるということは、もっと徳を積み、幸せになりなさいという神様からのエール。困難に揉まれ、人間が鍛えられた先に、回り回って徳や運が味方につき、自ずと運命はひらけていく。一方で、恵まれて現状に甘えると国も会社も人も衰退する。現状に甘えず、常に危機感持つことが、新たな知恵や挑戦に繋がり、思いがけない未来を形づくる糧になる。私の得た教訓は、『恵まれない幸せ、恵まれた不幸せ』。この言葉を胸に、感謝・勤勉・誠実な姿勢で、若者たちにもあり続けてほしい」。

 成功された方、偉業を成し遂げられた方、すべての方が言われます。苦労や困難を乗り越えた先に成功や感動がある。何より、自分自身を成長させる。できれば楽をしたい…できればきついことはしたくない…と思ってしまうのも人間だと思います(私もそうです…)。ですが、やはり、目の前の困難やきついこととしっかりと向き合い、乗り越えていかなければと思います。亡くなった私の母が、私に言っていた言葉を思い出します。
「苦労は買ってでもしなさい…」