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【2月28日】ハードル

公開日
2024/02/28
更新日
2024/02/28

校長のひとりごと

 2月26日付の日本教育新聞のコラム『不易流行』に、とても考えさせられることが載っていました。

 昨今の大学入試…。定員割れを避けるため、推薦や総合型選抜の枠を増やす。生徒は勉強をし直さないまま合格し、大学は高校化が進む。昨今の教員採用選考…。志願者が少ないからハードルを下げる。それでも倍率が上がらず、資質・能力を十分確認しないまま教師として配置する。昨今の管理職選考…。教員採用選考と同様、簡素化が進む。東京都も会場で論文を書くことがなくなった。法令の基礎・基本が危うく、教育課題を深く考える機会がないまま昇任する人もいると聞く。共通するのは人がいないこと。しかし、試験や選考のハードルを下げれば、準備の時間はおのずと減り、質の低下につながりかねない。
 社会全体はどうか。規制緩和といえば聞こえはいいが、質を保障しないことに等しい事案も。書店には「すぐ分かる」「分かりやすい」といったタイトルの本があふれる。ハードルを下げ続けた結果、思考しない人を生み出しはしないか。人は分からないから考え、考えるから思考力が育まれる。学校も同じ。「分かりやすい説明」と「分かりやすい授業」は異なる。「みんなが分かりやすい」を追求するとつまらない授業になる。目指すべきは、みんなが考える授業。子どもたち自身が焦点化したり捨象(しゃそう:抽象する際に本質的でない要素・側面・性質を切り捨てること。)したりすることで思考力が育まれる。少しハードルが高い部分(発達の最近接領域[→支援があればできる領域のこと])を大切にしたい。

 先日高校の先生も、「大学はとても入りやすくなりました。推薦や総合型選抜入試などで、早い時期に決まっていきます」とおっしゃっていました。高校入試もその傾向になってきています。また、コラムにあるように、教員の志願者が少なく、実際に現場では教員不足も続いています。様々な手立てを講じながら、何とか質の向上も図りつつ志願者を増やそうとはしていますが、現実はなかなか厳しい状況です。
 変化が激しく未来が予測困難な今、求められている人材は、単に高度な知識や技能をもっているということではなく、むしろ「グローバルな視点」であったり、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つに代表される「社会人基礎力」だともいわれています。それをいかに若いときから育んでいくかだと思います。そこに私たちが携わる「教育」が大きな意味をもっているのです。だからこそ私たち教師をはじめ大人が人生100年時代の「社会人基礎力」を高めていけるように、向上心をもって一日一日を送らなければならないと思います。
 授業も含め、何でも手軽に簡単にしていけばそのときは子どもたちの多くは「楽だからこれでいい」と思うかもしれません。しかし、きついこと、苦しいことを乗り越えた先の「成長」もなければいけないのだと思います。それは、教師であれ、大人でも大切であると思います。「ハードル」の高さをどうしていくか…難しいですが、しっかりと考え、学び成長しなければと改めて感じました。皆さんは、どう思われますか?